雛鳥は汐風にまどろむ【SS付き電子限定版】
」のレビュー

雛鳥は汐風にまどろむ【SS付き電子限定版】

南月ゆう

潮騒が繋ぐ、不器用な三人の家族の肖像

ネタバレ
2026年1月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 海辺の町を舞台に描かれるこの物語は、事故で両親と姉を亡くし、そして姉の子供の歩を引き取ることになった勇一と、過去を隠して惣菜屋を営む陵、そして幼い心に傷を負った歩の三人が、ゆっくりと「家族」になっていく再生の記録です。
​最初は親になる戸惑いと不安でいっぱいだった勇一が、陵の作る温かい料理に救われ、少しずつ歩と向き合っていく姿には、読んでいて何度も胸が熱くなります。完璧じゃない大人が、必死に子供を守ろうともがく姿はとても人間臭くて、だからこそ彼らが食卓を囲む日常の一コマが、何物にも代えがたい幸福な時間に感じられるんです。
​明るい惣菜屋の店主として振る舞う陵もまた、実は深い孤独と壮絶な過去を背負っています。そんな彼の「痛み」に勇一が気づき、包み込んでいく過程は、単なる恋愛を超えた魂の救済のよう。子供である歩くんが、二人の愛に包まれて少しずつ子供らしい表情を取り戻していく成長の描写も、子育ての尊さを知る人にはたまらないはず。読後には、大切な人のために温かいご飯を作ってあげたくなるような、優しくて深い慈愛に満ちた素晴らしい作品でした。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!