ハッピーエンド好きには不向きかも





2015年8月2日
表題作の2作品をよみまして、思ったことは「よく生きた人生だ」でした。大げさな表現かもしれませんが、この2作はBLではなく、一人の人物の人生を描いたものだと思いました。わかりやすいハッピーエンドでもなく、かと言ってバッドエンドとも言い難い。人生って決してなにがかちゃんと報われるものじゃない、むしろ理不尽で整合が合わないことの方が多いですが、それが物語にしっかりと落とし入れられていたように思います。主人公は切ない恋や燃え上がる恋、狂おしい愛や慈愛を知って、確かに生まれは不幸で、決して穏やかな人生と言えないけれど、それでも彼の人生はとても良く、幸せだったのだろうなと、感じさせるものでした。続編の方のタイトルが逃げ水ですが、彼はなにを追いかけていたんだろうか、それを最期にはちゃんと手に入れられていたらいいなーとしみじみしました。それとこれは蛇足ですが、表題作とその続編の間に短編が幾つか挟まるのですけど、いつものこの作者さん節というか、温度差がすごいです。あるところ風に言えばグッピーが死ぬレベルです。しかもラブラブとか胸キュンには失礼ながら当たらないように思います。この作者さん初めてって方は世界観着いて行きづらいかもしれませんが、慣れてしまえば味です。もし不安に感じる方はレンタルとかでこの作者さんの他作品を読んでみることをお勧めします。

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こまめ さん
(女性/30代) 総レビュー数:21件