蟲師
」のレビュー

蟲師

漆原友紀

どうしようもなく魅せられる

ネタバレ
2026年6月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「蟲」
命ある自然現象と作中で言われているけど、要は森羅万象と生命の循環。
これをテーマ・結論にしたり、パワーの源にする作品は多いけれど、「蟲」という概念・形を与えて可視化させたのは画期的で本当に凄いことだと思う。
(妖怪とは違う、新しい存在の創造)

奇抜な話が多く、普段は受け入れ困難になる所がすんなり入ってくるのも『蟲師』の妙。
光脈、命の素から生まれ、生態を持ち、繁殖し、他の生き物に影響する。なんとも奇異な話だが、虫も植物もそうだし、考えてみたら人間もまた同じ。
生きていることの不思議。
蟲という異形、微小な存在を通して知る大きな世界。
『蟲師』の世界にどうしようもなく魅せられる。

最終話、ヌシが人の形をしていることが無性に嬉しかったと語るギンコと、その後の展開で人は山のヌシになりきれないものと語るギンコ。人の心と蟲を、蟲師ギンコを介在者にして一貫して描き続けた『蟲師』の最終話に相応しいお話で、ギンコというキャラに改めて強烈な魅力を感じました。
それにしてもギンコの旅の終着点はどうなるんだろう。見てみたいけど、それを求めるのは野暮な事かな。

後書きの、祖父母から聞いた話もまた面白い。
時にキツネやタヌキに化かされ 山には神やヌシがいる
そういった超自然が当然のこととして在った昔の日本の原風景を、漆原友紀は身の内に持っているのだろう。
漆原友紀という一人の人間の中に巣くった物語。
それを読ませてもらえるのは、なんとも言えない至福に尽きる。
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