この世界の片隅に
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この世界の片隅に

こうの史代

命は繋がれている

ネタバレ
2017年6月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 映画をデジタル配信で見て、原作を読み、嘗て北川景子さんが主演されたドラマ版も全て観ました。戦争を扱うドラマや映画、漫画は戦時中の物資の少なさや空襲、原爆の悲惨さ、大事な人を失うことの悲しみを全面的に押し出したものが多く苦手でした。でもこの作品には最後まであたたかい気持ちになれた。
ラストで焼け野腹となった広島で一人の孤児と出会い、その少女を養女に迎える件が素晴らしい。少女の母は右手を失って命も失った。すずさんは不発弾で姪の晴美を失い、自らも絵を描く側の右手を失った。少女にはすずさんの事を「母は死んでない。ここに生きている」と感じたことでしょう。そしてすずさん自身も同じ年頃の少女に亡くなった晴美さんを見た。夫の周作にも授かれなかった我が子のようにも思えたのかもしれない。戦争で命を奪われても、その魂は他の人の姿を借りて命が繋がっていると感じさせてくれるような素晴らしい結末だったと思います
映画製作者は映画では描ききれなかった部分を加えたい」と語っておられました。恐らくはすずさんの内面をより丁寧に描くために白木りんさんと周作、すずさんの関係についての部分が追加されるのでしょう。「完全版」のリリースを楽しみに待ちながら本作を読み返したいと思います
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