将棋の子
」のレビュー

将棋の子

菊地昭夫/大崎善生

おもしろうて、やがて哀しき

ネタバレ
2017年9月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 2017年現在、漫画版の発行から15年ほど経っている。成田および、実名で綴られた江越、米谷各氏などのエピソードはほとんど原著に即してはいるが、全3巻という尺の中ではコミカライズとしてその中の「光」の部分に視線を向けて終わる、というのが精一杯だったろう。成田を中心とした群像劇ではなく、成田をも含めた群像劇になっていったのは、邪推すれば1巻(分)連載途中にそれとなく「3巻くらいで終わり」という指示があったのではないかとおもう。ただ、羽生、谷川、森信雄先生はじめ、中座、堀口、野月、木村、今泉といった現在のプロ棋士が実名で登場することによって(そもそも原作は実名小説である)、緊張感を伴うぎりぎりの世界線のバランスは取れているのではないだろうか。なぜ勝浦先生が棋譜監修なのかはいまいちわからなかったが、成田とおなじ北海道出身、関根名人の孫弟子同士ということなのだろうか。画風は(当時の)井上雄彦をはじめ数人からの影響が見受けられる。センスは別として、技術の面でそれを雑と見るか粗いと見るかは人の好みかもしれない。
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