山岸凉子先生の出現以前に心を揺さぶっていた、私にとっての巨匠、志賀公江先生。
先生の作品で、読みたい作品は実はもうひとつあり、絶対読もうと思っている。それは先頃男性が書評を書いていた「スマッシュを決めろ!」。そのかたの批評通りで、名作「エ
ースをねらえ!」の前をいく作品だったと思っていた。そのレビューアー氏が20代とは信じがたいが。
辛口の批評をする人は世の中いつでもどこでもいるものだが、私は実力のある漫画家であるとずっとリスペクトしてきた。少女マンガをたくさん読んできているので好きな作家は数多くいるが、題材がありきたりでなく、展開にもありきたりさがない。
本作はどうしても読みたかった当時からしてもスケールの大きいSF作品。コミックスを買えなかった無念さがずっと胸にあった。
表現方法の古臭さを今の読者は敬遠する。
子育てブランクを経て少女漫画に戻った私は、近年の作品も読んでおり、リアル書籍では一気買いの大人買いの全巻買いをしている。ただ、70年代物も抵抗感無く読める私には、読みたい往年の名作絶版モノの道が無くこの形で読むことになる。
今、HQを集中的に注目してるのも、現代の作品に取り上げられなくなり、あの頃ならばよく描かれた題材が時々入り込んでいるのを味わえるから。
絵は時代を感じさせるけど関係ない。生命の痕跡が惑星に見つかり、地球外生命体の可能性は今や荒唐無稽なトピックでない。
地球外居住可能領域について研究が進む今は、この作品は時代に合っているかもしれない。
ストーリーのテンポ感は現代の作家の五冊分が一冊のよう。当時の表現は古い映画のように仕草も言葉も時代性が入るが、中に入り込んで読むとはまれる。脳を別の場所で保管して、体を遠隔地から動かす、これは、近年のアカデミー賞授賞映画「アバター」と同じアイディアだ。
篠原千絵先生の「蒼の封印」も同じ系列に分類できるかと思う。ヒロインが自身のことを周囲と同じ人間と疑わずにいた点において。
当時、発売時期を過ぎてしまうと、余程の大作でない限りどこの書店でも、買うことができなかった。電子書籍システムで手に取れると判ったときはこのシステムが有ってくれて良かったと心が踊った。
幻の本をこうしてついにたどり着いて、じっくりと読める嬉しさをたっぷり味わっている。
2023/4/8追記
1972年9月3日号〜11月19日号週刊マーガレット初出
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