待たせた、などというレベルでなく、ひどい別れだった。
彼の去り際の言葉はヒロインを思いきり打ちのめした。立ち直れないほどの苦しみの七年、一切の接触がないまま、いきなり呼び出し?
王家出身が理由での両者の政略結婚。それを、誰が決めたのか!?いくら王様でも、じきじき?
ヒロインが前例や因習を破る振る舞いをするほどに行動力溢れる女性であることを、ストーリーが示す度、二人のあっけない別れとその後が、全く結び付かない。百歩譲って、ひとりの女が恋に落ちあとで失えばそれはアリだとしても、男子を生んだら離婚、とは、政略結婚にしては自由に過ぎるのではないのか。
誤解が基で別れるとかこじれるストーリーはHQ定番だが、これほど、話がそこだけ、というのは珍しい気がする。反面、絵の綺麗な先生の手腕振るわれるエキゾチックなイベントは、活字だけでないコミックの醍醐味を見せてくる展開だが、この二人の七年前の出来事の衝撃は残したまま。
彼の謝罪の気持ちは終盤伝わってくる。そしてヒロインへの愛を伝えるのも見せ場にはなっている。
しかしなにかが、このクライマックスでの真実の判明の盛り上がりを阻んでいる。
それは、ここまで、空白の7年が放置された挙げ句のことゆえ、もっと私は、ヒロインへの過ちを悔いる絵に、よりドラマチックな表現への期待があったからかもしれない。物語の主軸はこちらなのだから、そこに読み手として感情を動かされたい。
このストーリーは、物語という作り物のなかに読み手を信じこませる、展開されている世界をリアルに感じさせる、という私が求めているものが不足している。
王は王に見えないし、王に従う人々も兄嫁たちもヒロイン自身も、らしく感じ取れない。綺麗に描かれているのに一枚一枚は絵として独立するシーンとして終わってしまい、話の流れにコマ間の広がりを感じさせるような連携が余り強くない。
見世物を通りすがりに眺めていたら、劇場空間に浸れないままいろいろ進行して、あれは誤解でした、ハイごめんなさい、で幕引き。
軽い気持ちで読むには充分応えているし、見ていて美しい絵があるので、作品の砂漠ワールドの二人のところまでトリップなんてことを諦めれば、幸せになってください、という気持ちで読み終えられる作品。
作品集で読んだが、個別感想をここに記載。