ネタバレ・感想ありやがて、藍になるのレビュー

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藍に染まる指と重なる想いが良かった
ネタバレ
2025年3月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 職人の世界のイメージは、自分と向き合う毎日の詰み重ねが技術となって、芸術作品になるのかな…という位の浅い知識しかなく読み始めたのですが、あぁ、なる程と。藍染職人の家で育った2人の青年が自分の人生を振り返り想うと、この様な静かなのに熱い物語になるんだなと感動しました。その藍も寿命があり最後は染まらなくなってしまう所に、だから今なんだと、人生の節目を迎えた主人公達と重なるのも良かった。紺太と大青の物語+短編2作品。

実のところ、紺太×大青なのかな?と思いましたが…リバっぽくもありはっきりとは分からない。言葉少ない紺太が大青に触れたいと想う気持ちは静かで。セふれもいた大青とはまた違った想い方なのかな?と思いました。大青はその経験からか最初は抱かれたけど、想いの昂り方では抱きそうな感じもして、染まっていく感がある2人がめちゃくちゃ尊い✨と良かったです。
そして、職人らしい…手を見ただけで埋まる家族の時間。紺太と本当の実家(お爺ちゃんとの再会)も感動でした。

スピンオフ「大青」…大青が会社勤めしていた頃の物語。育った環境を想い出すと共に、紺太への忘れられない気持ちを感じて良かった。

短編「泳ぐ、溺れる、泳ぐ」…この繊細さ、と感じた中学生と用務員のおじさんの物語。おじさんが一緒にプールに入ってしまった気持ちと、夜に少し少年と話をしてしまったおじさんの気持ちを思春期真っ只中の彼が分かる頃には、もう少年じゃないんだろうなと(耽美)少年がおじさんを思い出すのは、おじさんになってからなんだろうなと。良かったです。

「しんしんと雪の降る」…両片想いなんだろうか。同じ布団に入るのを許してる所で、ふふ、となりました。これぐらいの距離感の男友達なのか何なのか関係って良いなと。萌
素晴らしい作品に出会えた
2024年7月7日
藍染をテーマに描かれたblがある~!?と、この作品を見つけた時は嬉しくて興奮しました。
作者様のお母様が染色家である事、とある藍染工房を参考にされたとの事ですが、おそらくあそこの工房だろう(私も見学に行ったことがある)とすぐにピンとくる程、確かな画力で本当に隅々までリアルに描かれています。両面型付けや藍染についての説明はほどほどにしておいて、しかし描写はかなり的確であり…そこに作者様の伝統工芸の世界への敬意と理解が感じられました。1ミリのズレもない様に、整然と並んだ紋様を繋ぎ合わせ続ける仕事を人生と重ねて生きてきた職人にとって、義兄弟とどの様な関係になればいいのか、そこに正解は無いように思えます。どこまでいっても満足する事の無い職人の仕事と同じように、静かに時間をかけて…時には悩みながら進んでいくしかないのだと感じる終わり方でありました。
ラブ展開での高揚を求めている人には物足りなく感じるかもしれませんが、このテーマをよくよく生かした素晴らしい作品だと私は思います。

表題作以外に短編が二話あります。
プールでのお話を読んで、この作者様は息苦しさを表現するのが巧いのだとハッとしました。
重い…重いなぁ~と感じるのは、静寂の中で、作品に引き込まれ、読み手も息をするのを忘れているからかもしれない。
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藍、生きている
2023年12月17日
藍という染料は生き物だと聞いたことがあります。大青も紺太も名前をつけたくない感情をずっと抱えて、目を逸らしてきていた時を終えなくてはいけなくなって。息が詰まる様な緊迫があります。想いあっていると思うのですが、うまく噛み合えない2人。いつか寄り添っていくんだろうなと思わせる。藍が育つ様に。静かで行間のある独特な味が癖になる作者様です。
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爪の奥に入り込んで蓄積する藍と愛。
2023年5月26日
藍染に関する知識とリアルな描写、それもそのはずえすとえむ先生のお母さまが染色家だというのだから大納得。義兄弟で藍染工房の家を継ぐ話。爪の奥に入り込む藍の染料、皮膚の裏側まで届いていくインディゴ。染め上げた時に表と裏がぴったりと揃う美しさ。藍染の話をしながら、まるでお互いの関係の話をしているような台詞と、芸術性に富む表現にぞわぞわ極まりました。やっぱり凄く好きな先生です。
納得のいく作品ばかり。
ネタバレ
2022年5月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 自分の実家が 伝統業を営んでおり、叔母が機を織り、叔父が染色をするのを 幼少期に見ていたので、この”藍になる”というタイトルが とても気になりました。そして、読後、この”藍になる”という意味を噛みしめました。血が繋がっていなくても家族。手の皺に残る藍の染色が物語っているものは、血で繋がっている家族よりも もしかすると 深いものなのかもしれません。だから、紺太は やっと見つけた藍の繋がりが 火事でなくなったように思えて 心神喪失したのかもしれません。でも、やっぱり 藍の繋がりは 深く、強く 納得がいったので、家に帰って来たのじゃないかな、と思いました。最後の短編を除いて、ちょっと 切ない雰囲気のある作品が収録されているのですが、どの作品も未来は明るいかもしれないと思える終わり方だったので、さすが えむとえす先生だなぁ、としみじみ思いました。
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塞き止められた激情の行く先は
2021年11月2日
激情を外に出さず押し込めてきた二人。一見静謐に見えるそのほんの少し内側に煮えたぎるマグマにゾッとした。(他の方のお言葉拝借すみません!マグマは本当にその通りと思いました。m(__)m。)塞き止められた濁流はやがて予期せぬ決壊をする。この二人の激情もきっと。動きの少ない静かな義兄弟の物語です。しかしほんの少し内側に見える激情に空恐ろしくなりました。大の大人の男二人の激情のエネルギーを思えばゾッとする。作者様のお話で和テイストは初めて読んだのですが、静かなる青い炎こそ高熱というか、一見止まって見える独楽こそとてつもなくエネルギーを保持してるというか、ともかくとんでもない力量に改めて感服。良いものを読んだぞっと。
2015年12月30日
とても静かな物語です。義理の兄弟二人の静かな言葉と熱の塊のような感情。
これほどの静寂と、いつ噴き出すかもわからないマグマを同時に感じる様に描くことが出来る作者に驚かされる。
ただ私はこの二人のその後が読みたくて仕方がない。いつか続編を書いてほしいと願うばかりです。
2013年4月12日
これを読んでいちばん驚いたところはお母さまが染色家というところ。アートなお血筋ですなあ。
テーマもいいし、しっとりとした大人の情感溢れるお話なのですが、どうしてもえすとえむさんのキャラクターにはバタ臭い華やかさがないと、わたしは物足りなくなってしまうようです。
静かな和の世界
2015年11月19日
非常に静かな和の世界。
職人さんが淡々と黙々と静寂の中、一人でその何百年と継がれてきた技術を日々紡いでいくような、そんな静かな世界が広がる世界でした。
お話自体は面白いと思うのですが、あまり頭に入ってこない…。すごく美しい世界だと思うし、もっと心にじーんと響いてきてもおかしくないと思うのに、なんでだろ。ちょっと私には高尚な世界だったみたい。本当嫌いじゃないんですけどね。登場人物達の静かに耐えてる?心情にこっちも引きずられちゃったみたいです。
心を落ち着けたい時、静かに読みたい時にぴったりな1冊だと思いました。
心を落ち着けたいときに読む
2014年5月2日
自分的には心を落ち着けたい時に読む本です。短編集で、最初の染色職人の話が一番長い。ボーイズライク的な作品もあるし、ちょいと地味かな。
渋い
2013年1月29日
想いを繋ぎ合えない義兄弟の物語ですが、最後ギリギリまでもどかしい感じが続きます。他の作品には無い、職人の渋さが味わえました。受けも攻めも格好良いのですが、感情の起伏が見えにくいので、なかなか発展せず物足りなかったので、☆3つです。短編の、中学生と夜間警備のおじさんとのプールでの密会の話が、ちょっと重くて好きでした。
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作家名: えすとえむ
ジャンル: BLマンガ
出版社: 東京漫画社
雑誌: MARBLE COMICS