見る程に中東顔に見えてくる顔立ちの彼。食習慣や、女性が身内でない男性と同席できない慣習に触れられる。あちらの文化圏の女の子達が本心からそれでいいと思っているのか、それとも諦めているのか、王女のシーンは、話の本筋ではないけれども日頃の私から見た彼らへの疑問そのままに写し出してくれた。
そして、そこに彼の言葉があり、中東男性の典型的な男女観に彼自身の女性不信が混ざり、それでも、明日を向くこれからの中東の男性の予感と、両方ある。
彼はヒロインを甘やかさず、親友と元彼とに去られた悲しみに暮れる暇を与えなかった。彼女は痛々しくも雄々しく立ち上がる。
プロフェッショナルとして、目の前の仕事に邁進するヒロインの姿勢が素晴らしい。
HQは仕事などは形ばかりのケースも少なくないが、これは他のことに「うつつ」を抜かさずにいて、立派にこなしていくヒロインに感心する。彼女は「クジャクの羽」ではないからだ。
共同経営者が居なくなり、会社を畳もうかと思ったヒロインへの彼の言葉がこれまたガツンと来る。
「犠牲を払う気も 賭けに出る勇気もないんだったら結構」「言い訳しながら生ぬるい夢を語っていたまえ」
架空の国ではなく実在の国の出身者設定で、国情も語られ、甘いだけのHQではないところが、ピリッとスパイス効いていてストーリーを骨太にした。
二人の関係は、ラブ要素薄く、一種の尊敬だったりして互いの遠慮が混ざり、なんとなく少し距離があるようにも感じられる。
しかし、着実な日々の積み重ねが二人の間に信頼と親近感を育んでいたことは、ただ仕事に打ち込むヒロインの姿の描写で、何かしら伝わるものがある。
休日の急速接近はキスの伏線あるとはいえ少々一歩間違えばセクハラ。
二人の愛情のやり取りに娘のラシャは敏感に二人の間に通うものを感じ、一方ラシャはラシャでなつく様がほのぼのしてくる。
コマ大きめで顔アップ多い高山先生の作画が私には不満で、頁数の割に少ない絵の数がHQ割高感とそのまま繋がっていると思っているが、この作品は彼が中東の男性にちゃんと見える力を持つので、顔の造作の強調には良かったと少し納得。民族衣装による目眩まし無しで思わせるのは凄い。
HQコミックスのシーク物などは、扮装だけということが多々あり、装束が無いと中東系には見えないことが多い。
そこが本作はちゃんとそういう地域出身を思わせて、いいと思った。