契約結婚もので、ヒロインの方から持ちかけるタイプのストーリー。まわりのみんなが歓迎。彼にとってのメデューサが実は、というのも良かった。
感情の彼の方の気づきが、これまでを振り返ればストンとくる、という場面、もっと濃い脚色ビジュアルで読みたかった。読み手のこちらも彼女と彼のこれまでを噛みしめて、今の到達を味わえるように、そうだったのか(そうだったんだよ)というのを感じ取りたかった。彼の(ちょい卑屈、HQは尊大な自信家が多いのである意味異色な)態度、コンプレックスに対してはヒロインの気持ちを察するに余りあるものがあり、結婚契約書を交わそうと持ちかける場面もだが、そそくさ裁判所でやろう、の申し出も、ケイトの胸中を思って苦しくてならなかった。結婚したくてありとあらゆる手段で、という話は古今東西あるが、ヒロインを応援してくれる彼の家族の助け船も気持ちがよい。積極的に結婚イベントに、彼らが魂を吹き込んでくれた。
彼の心の推移の表現に私はもっと劇的盛り上がりを期待してしまった。前半ヒロインに彼は無意識につれなくしていたので、「偽物でもなんでもいい」から彼と結婚してみたかったとまでのケイトの一途な気持ちを、後半では存分にひっくり返すほど、気持ちよく晴らせてやれたらと思った。ヒロインの方に感情移入するのが読者の立ち位置と判断されてのことと思われるが、早くから彼女は心のうちをさらけ出し、ただ彼の動きだけが、展開の鍵を握っていたのだから、彼サイドの変化描写はもっとドラマの盛り上げが欲しかった。
ストーリーがよいので星はとりあえず5つにしたが、私は高山先生の絵はスマホにはいいが、絵が大作りに思えることが結構ある。顔に、引き付けられない。
瞳も、しゃくれ顎も、線が簡単なのも、なんとなく大味。服の趣味も、どうもどこかダサい。
経済的に困ってない人たちだから、余裕ある雰囲気が欲しい。
シンプル過ぎるラインだけで仕上がっているように見えてしまう。塗っているような箇所が少なく感じ、マット感が不足。
ただ、画風として、親しみを持てるので、ここに付け足すものが難しくなるのか。
せめて荒っぽく見えなければ、もっとメインキャラにうっとりと見とれるのに。わずかだが絵に酔わせ足りなさが。