ネタバレ・感想あり十次と亞一のレビュー

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一緒に人生を共に出来る1冊
ネタバレ
2024年11月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「隠れていた 右のポケットに 僕の罪が」出だしから興味深く引き込まれる。十次の人柄や視野の広さ、柔軟な思考と亞一への歪な共振…このキャラ設定がすごい。初見の時は、優しさと賢さ故に亞一を否定せず伸びやかに彼を動かし創作意欲を謳歌してるように感じていたけど、作家人生が枯渇してしまいそうな程 亞一に魅せられてどんどん侵食していってるところも見えて好き。
でっかい赤ちゃん亞一の幼い純粋さと無垢な非常さが胸にくる。彼の半生に思いを馳せながら、亞一の中の止まら物語や譲れない矜恃、葛藤と矛盾と不器用な生き方に並々ならぬ母性が弾けます。
「亞」の中に「十」がピッタリはまるように、2人の不思議な共鳴と育む時間が緩やかに癒しをくれて好き。
通勤時に読んだり、旅先で読んだり、寝る前に読んだり…と、私の気持ちと思考を整えてくれる好きな作品。これからも何年経ってもふとした時に読むと思う。
オマージュと幻想と創作熱をミステリ仕立で
2024年9月23日
352ページ。
お値段は張りますが、単行本2冊分のボリュームです。
大正時代。漫画絵描きの十次と、謎多き変わり者の亞一との出会いから始まる物語。ミステリー仕立てになっており、幻想的な表現をまじえて明かされていく、亞一の心情や過去がとても良かったです。
更にこの作品を私好みにしているのが、芯にある「創作」への熱。似たアンテナを持つ二人が共鳴して、降り注ぐ創作のインスピレーションという慈雨を受け止めているように思えます。亞一の純粋さ(良いことばかりではない)に宿る巫覡にも似た文学の才、十次の奥に確固として存在するイメージの泉、互いに刺激し合い引き出し合う関係性はかけがえがなく、ずっとそのままでいてほしいという夢のような関係です。この二人の作品が実際には見られないのが悔しい。きっと出版されるであろう美しい装丁の幻想文学の本……古本屋の片隅で見つけられたら良いのに……なんで、なんでフィクションなんだ……!
作品説明に「複数の文学作品を下敷きに」とあるように、いろいろとオマージュが見て取れます(さほど詳しくはないので見落とし多そう)。知らなくても充分楽しめるフィクション作品ですが、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』と『お勢登場』は読んでおくと楽しさが増すと思います。長持って魅力的……。
あと、下宿の花ちゃんの素直な腐女子ぶりがかわいかったです。
〜〜〜〜〜
他レビュアーさんの記載にありますように、著者pixivに、こぼれ話がございます。気付いてなかったのでありがとう、読んできました。みなさまも是非。
大正レトロなミステリー、雰囲気がすてき
ネタバレ
2024年9月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 夢とうつつを行きつ戻りつする亞一、美しい笑顔の下の哀しみ。地に足の着いたおおらかな気質の十次。亞一が思い描く幻想を語り、十次が文字に書き起こすことで、二人は同じ世界を共有する。怪奇っぽさを匂わせたミステリー漫画でおもしろかったです。花チャンの腐目線もかわいいじゃないか(笑)。こぼれ話もまとめてコミックスにしてくれたらいいのに。支部で読めます。絵柄のかわいらしさも良き。
笑いあう姿にほっとする
ネタバレ
2024年9月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 352P、全表題作。売れない漫画家の十次と売れっ子小説家の亞一の話。亞一はディスグラフィアなのかな?自分の名前を書く様子がひとつの線に意味を持たせており覚え方をなぞる姿が微笑ましい。本来、朗らかな性格なのだ。まあちゃんや千鳥の真相が明らかになっていくと自責の念に囚われていた亞一のそれまでの気持ちがよくわかる。実際の生活では困難な事が多いだろうが小説家という職業で口頭筆記してくれる大切な相棒に出会えて良かった。
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