表紙絵やあらすじから軽い内容かと思ったのですが、とても深みがあり読み応えのあるストーリーでした。ストーカーまがいの奇行を繰り返す春樹に最初は抵抗がありましたが、自分の溢れる程の愛情と同じだけのものを返して欲しいという寂しさが根底にあるのだとしたらやり切れない気がします。初読みの作家さんでしたが、人の弱さとか欲望とかの感情表現がとても秀逸だなと思いました。春樹の複雑で難しい部分と人間くさくて欲深い部分がうまく絡まっていて共感できました。過去の恋心の糸が絡んで固まり、ほどけなくなってしまったセーターを優しくほどいていく湯ヶ原と、編み癖の残った毛糸で湯ヶ原のためのセーターを編み直す春樹。この描写はそのままタイトルと繋がっており、素敵なラストでした。