笠井あゆみ先生がイラストを描いて人気を博した王侯貴族の小説に比類する話を期待して紙本を購入して読みました。
西野花先生は濃厚な描写がお好きな作家の方だと存じ上げておりました。以前、葛西リカコ先生がイラストを担当された神族と獣のお話もその様な濃い話でした。けれども、私は、濃厚な話よりも精神的な結びつきが強い話が好きです。
今作のレヴィアスの容貌についての描写で、瞳の虹彩の色が紅玉とありますが、黒髪にその目を想像してみると、神秘的とか禁欲的というよりも、魔の者というか人外の存在に近いものと思ってしまいそうです。飽くまでも赤い瞳に固執するのであれば、髪色は白か銀にすれば神秘的だったと思われます。そうすれば、ルークの金髪との対比がとても美しく、二人が並び立つと誰もが褒めそやす程の麗しさだったでしょう。イラストの絵師の方の絵は表紙と口絵以外は白と黒です。絵師の方が主人公達の容貌を実際に描く前に、小説家の方は一度簡単な人物像を自分で描いてみるべきだと思います。そうすれば、自分の主人公たちがより生き生きと動き出すように創造できると思います。
表紙絵の主人公たちは『ロミオとジュリエット』のバルコニーシーンを連想させて素的です。ルークが少し短足で足が意外と小さいので、二度見してしまうのですが。
西洋では、竜や獣を悪い存在としてみなしますが、日本では、龍や獣を神として畏怖すべき存在としています。西洋的な話は其のあたりのものの考え方も楽しみながら読み進めていくことができます。