久野の心が広いですね。あれだけツンツンの静秋を、好きになれるって、恋とは不思議なものです。静秋は拗らせがいきすぎて、生きづらくなってる子です。年は大人だし働いてもいるのですが、精神年齢は高校生くらいでしょうか。四方八方で甘えが出たコドモの態度です。静秋に共感できなかったせいか、どうしても未消化な感じが否めませんでした。でもストーリー全体としては、遺品整理を通してその人の人生と思考のほんの少しの部分を垣間見るという、光の当たらないところに焦点を当てた静かな余韻の残る作品です。誰もが多寡はあれど心にもっている「傷」を、どう受け止めるかがその人の魅力なのでしょうね。そういう意味ではやはり静秋の「傷」の抱え方は、大人じゃないし魅力的でもない。静秋に「傷」を与えた神崎が、人間味があって目が離せない感じで、そこに救われる物語でした。