ヒーローザンダーは恐れていた。父親からいわれなき暴力を受け 自分もその血を継いでいる事に、血は争えない事に。ヒロインサマンサの連れてきた子供を見るたびに 彼は過去に自分を引き戻し苦悩する。そして、サマンサも前夫の仕打ちに恐れ 目の前のザンダーを同類と恐れていた。言葉にしなくても伝わるお互いの「恐れ」が 惹かれながらもすれ違っていく気持ち。タトゥーを刻れなければならないほどの決意 流されてはいけないシングルマザーの生活への苦しみを心の底から同情する。それでも 拒絶する彼女を押しとどめてもその理由を聞かせるザンダーの心の叫びに私も痛みを共感する。彼は元夫と同じではなくても 未来は無いと諦めるサムをザンダーは追いかけるのだが、私としては もっと早くに決断して行けよと 尻を蹴り飛ばしたくなった。コミカルさを加えて総体的に重くない作りは読み心地が良い。が、兄ダリウス編のほうが、恋模様が色濃く印象的だった。