表紙の印象から想像できない、ストーリー重視の作品でした。絵柄もさっぱりしていて、サラッと描かれているのに、グッと読者を引き寄せるセリフやコマがあって、何とも言えない余韻が残りました。
抱える痛みや悲しみが深い時、抱えるものと同じくらい強く心を動かしてくれそうな何かを求めるというか。自虐的に見える行動も、再生するために必要な過程であったりする。水葵は忍との関わりでそのキッカケを掴んでいく。同時に忍のキッカケになり得るのは、抜けられないトンネルの暗さ果てしなさを知る水葵なのだと思う。人は本能的に第六感が働いて無意識に人生を選択していることがあるけれど、二人の出会いはそれに動かされている様に見えた。光を取り戻してゆく水葵の瞳に安堵しつつ、どこにも向けられない忍の眼差しが切ない。余韻を残すラスト、抱えるものが深いだけに安直にならず、私は好きでした。
交わりのシーンも多く修正も甘いのに、いやらしさよりも切なさが引き立って胸にせまる。ただの交わりではなく、二人が必死にトンネルから抜け出そうとしている様で、美しく思えた。