心臓に重大な疾患を抱え20才まで生きられないと告げられた男の子逞(たくま)。
子供の頃からずっと逞を想いつづけ、物語の全てを通じて逞の生きる支えとなり、彼の命を決して諦めなかった女の子、繭(まゆ)。
この物語はこの二人の恋愛を軸に、逞が友達や先輩後輩、両親や病院関係者とのやりとりの中から“幸せとは何か”を知って成長してゆく物語です。
話が少し長めで、かつ、病気を扱った内容であるため重い部分もあります。
けれど、笑える部分もたくさんあり、キャラクターの個性も丁寧に描かれているので彼らのセリフや行動に共感しやすく、最後まで飽きずに読めると思います。
特に私が話に引き込まれていったのは、後半部分からです。
作者の病気に対する考え方(臓器移植について等)がはっきり描かれていたり、逞を取り巻く様々な人達の、彼の命に対する思いが交錯してくるので、考えさせられることや気付かされること、彼らの思いに涙させられることがたくさんありました。
ラストについては様々な意見があるみたいですが、私はこの物語を“自分、繭、両親達にとっての幸せに気付くまでの逞の軌跡”として読んだので、その結論はきちんと描かれていると思い納得しています。逞に“もう十分だよ”と言ってあげたいくらいに。
長々と書いてしまいましたが、この話はやっぱり映画と同じように逞と繭の純愛が一番の見所だと思います。
ただ映画と違うのは、ラストの部分で逞が繭に対してよりはっきりと自分の想いや願いを伝えている所。(映画では平井堅さんの歌詞が逞の想いを代弁してますよね)
映画を観てより深く“僕君”の世界に触れてみたいと思ったかたはぜひ読んでみてください。