心の拠り所である祖父の容態が急変し、病院へ駆けつけたところ突然の地震に襲われ、大正時代へタイムスリップしてしまうお話。
タイムスリップするという設定は珍しいものではありませんが、その瞬間に聞こえたじいちゃんの声の真意が分からないまま、慶光の身代わりとして周囲の人と交流を深める光也。顔が似ていても性格が全く違う光也のストレートな感情表現が仁や二人の周りにいる人たちに少しずつ変化をもたらしていきます。そのまっすぐさは光也の性格でもあり、時代の変遷でもあると思うと感慨深いです。
物語は慶光の親友である仁との心の交流から、相馬の両親の死の真相を探るミステリー的要素を含みながらじいちゃんの真意へと辿り着き、タイムスリップは終わりを告げます。そして、全てを読み終えると、光也がタイムスリップしていた時間がキラキラ輝いていた、とても楽しい日々だったと感じられるのがとても不思議でした。慶光の周囲の人たちと過ごした僅かな時間が青春時代の思い出のように輝いていたと思います。
現代に戻ってきた光也が彼らに会うことは出来ません。彼らの行く末に想いを馳せ、彼らの精一杯生きた痕跡を聞くのがとても切なかったです。でも、仁がチェスの駒を最期まで持ち続けたように、彼らの中に光也がしっかり刻み込まれていたことが、ゴールデンデイズの証だと思うと、とても深い物語だなと感じました。