冴えない独身中年サラリーマンの佐々木さん。彼には少しだけ気になる女性がいる。スーパーのレジ打ちをしてる山田さんだ。だけど付き合いたいとかそんなんじゃなくて、行くたびに彼女がいてくれるのを気持ちの中でだけ愛でてる、そんな程度。
そんな佐々木さんはある日、スーパーの裏で女の子に声を掛けられます。ちょっと尖ったファッションのその子は田山さん。同じスーパーで働いてると彼女は言うけれど、実は山田さんご本人。だが佐々木さんは気づかない。彼のイメージの中で勝手に、山田さんは喫煙者ではないと思い込んでる節もあったし。
以来、そのスーパーの喫煙所を主な舞台に物語は進んでゆき、からかわれてる中年オヤジとからかってる若い娘だったはずの二人の関係性もゆっくり少しづつ変わってゆきます。
喫煙所が舞台というのがとても面白くて。よくよく考えると、とても特殊な場だったりするのです。地位とか力関係とか一切関係なしに、そのときタバコを吸いたい人間が居合わせて、しかも大抵立っている。本来出会うはずのない人と雑談する機会が普通に転がっている。力関係無視という点では銭湯とかサウナも同じだけど、性別では分けられて基本的に異性に出会うことはない。
関係ない赤の他人同士だから気軽に話せてしまう。だから佐々木さんと田山さんの接点が生まれたのだけど、気づけば赤の他人どころか、身を呈して守ったり、相手のことが頭から離れないくらいの存在になりつつある。大人になると、それなりに臆病になったりしがらみがあったりして、気持ちだけじゃ動けませんからね。
実にじれったい進捗だけど、それがまたいい。これからもまだまだ焦らしてください(笑)