ノベルが素晴らしく、かつ挿絵も素晴らしかったので、同じ作画家様によるコミカライズ作品にとても期待しましたが、少し期待し過ぎてしまったかも💦。
この作画家様の、物語の一瞬をイメージし、丸々1ページ使って丁寧かつ鮮やかにイラスト化する技量は素晴らしい。本コミカライズの表紙のみならず、原作ノベルの各巻の表紙や挿絵には本当に惹かれました。
しかしこれが漫画本体となると、少し趣きが違ったようです。
漫画では「一瞬」ではなく、「流れ」のなかでクライマックス場面はよりドラマチックに描き、逆に大筋に影響のない箇所は簡略化したり削ったりするメリハリが求められます。読者は、ダイナミックな緩急と抑揚に溢れたダイレクトな視覚を楽しみながら物語の最終地点まで引っ張っていかれることを望みます。
その点、本作品は全体を通してそんな緩急と抑揚をあまり感じられませんでした。人物や背景の作画も表紙に比べると雑に感じてしまい、コマ割りも単調で印象に残る大きなショットやクローズアップも見つけられず。一方で言葉による説明が多すぎる感があり、漫画ならではの視覚による高揚感があまり感じられないまま終始淡々として読了し、総体的に物足りなさが残りました。
ノベル先行の私は脳内補正ができ話についていけましたが、コミカライズで初めてこの作品に触れた人が、どこまでこの物語の本質に迫り面白さが理解できるか、少し疑問を感じました。
結果的に、壮大かつドラマチックな世界観のノベルのコミカライズ作品としては、完成度は残念ながら今ひとつだったように思われます。
とは言え高評価レビューも多い本コミカライズ。私のレビューはごく少数意見ということで、上から目線の厳しい物言いと評価になってしまった点はどうかご容赦下さい🙏。