「2055」シリーズ、第3作目。「2072」の事件から3年後の世界を描いたお話。
三月先生のこのシリーズ、短編とは思えない程、深くて考えさせられる作品です。今回はリールー型のAIと、それに管理されるミカのお話です。
トートは旧型のAIで、人の形でもなく、言葉を発することもありません。長年の使用で故障だらけ、ミカの世話を毎日必死に焼いていますが、何一つ上手く出来ていません。それでも、ミカに対する溢れんばかりの愛情がきちんと伝わってくるし、表情豊かにすら感じます。そして、そんなリールー型AIを大切にし、故障を個性だと言い切るミカにも愛情を感じました。
トートがついに人型のニューオーダーに代えられそうになると脱走して反発するミカ。二人の絆に涙が出ました。ニューオーダーにとっての雑音と呼ばれるものの中に、人間らしい愛情が垣間見えたのを希望と呼ぶことにこそ、未来の希望が見えた気がしました。
とにかく、最初の喜怒哀楽が伝わってくるくらい可愛いリールー型トートが好きです。そして、何度読んでも胸が熱くなる最高の作品です。