ネタバレ・感想あり2075のレビュー

(4.9) 17件
(5)
16件
(4)
1件
(3)
0件
(2)
0件
(1)
0件
不完全だからこそ人は愛おしい
ネタバレ
2025年8月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 三月先生が、AIと共存する同じ世界線の中で主人公と時間を変えて描くオムニバス作品「2055」「2072」「2075」。本連作では、SFとBLを交錯させながら、人を人たらしめるものは何か、を読者も読みながら自然に考える作りが秀逸。人間とは異なり不完全さを排除したニューオーダーAIを登場させることで、我々人間の感情の揺らぎ、衝動的に生まれる感情の愛おしさ、それを失うことの悲しさを短編の中で深く感じ取らせる。3連作通しで是非
【ネタバレ】
 2025では、AIを愛する人の代替として求める人間の気持ちと、手にした結果生まれる心の欠落と後悔、けれども愛する人と同じ姿をした個体を自分で消すことができず、自らをこの世から消去することを選択する姿が描かれる(アオイとヤナギ)。その哀切さたるや…。
 そのような人間が続出し、オールドAIと定義されたアンドロイドたちが、人間らしさを除去した新型のニューオーダーAIの判断で破壊対象となり、人間すらオリジンと呼ばれてAIに管理されるディストピア的未来を描いた2072。そこでは、一見アンドロイドのようなサガミと、愛情という感情が分からず人間として欠落を抱えている気がするけれど理由が分からないスルガが登場。愛情を学ぼうと再生させたAIがアオイ。そこで語られるのは、死後も色あせないヤナギへの愛…。反乱者として活動していたスルガの頭部が実は…という衝撃の事実と、それでも変わらずスルガを愛するサガミの献身が切なくて号泣…。
 3作目の本作では、スルガと同じ反乱者として管理対象になったミカと彼を管理しするポンコツAIロボット(トート)の関係が描かれる。不完全なAIに愛着を感じるミカ。ミカといるうちに愛情ノイズを発生させたトート。このトートが自分を犠牲にしてもミカを守ろうとし、人型となってそれまで表現できなかったミカへの愛情表現を爆発させてて愛おしい。トートがアプデするときに登場した2025のあの人に爆泣…。そしてアプデにより人と同等の感受性を備えたトートが震えるほどの人間の愛の素晴らしさを伝えるミカ。本作では誰かの代わりではなくAIそのものを愛するという転換点があり、ミカがAIとの隔たりを乗り換え、共生の道を探るラストに希望を感じてまた涙…不完全だからこそ人は愛おしい。短編の中で独特の世界観、深いテーマを描き切る才能に敬服
Chapter.2
2025年8月28日
Chapter.2読みました。2055から追っている方がほとんどだと思いますが⋯ある人物が登場します。涙無しでは見られません。2055も、2072も私にとってはすごく切なく悲しい物語だったので、この2075は希望です。
やっぱり三月先生ってすごいなって、改めて思った次第です。天才です。
来月新刊が出るので今から楽しみです!(拒まない男のスピンオフ!)
消しても消えない。
ネタバレ
2025年8月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 美麗な絵柄に引き寄せられ、『2055』『2072』、『2075』上下巻を大人買い。
タイトル(時系列)順にじっくり拝読したはいいものの、このシリーズの始まりである弥凪(やなぎ)とアオイの短くも切ない物語、『2055』の序盤からずっと涙が止まりませんで…シクシク痛む胸を押さえながら、ティッシュを相棒になんとか最後まで読み切りました。
いや素晴らしかった。
短いお話だと舐めてはいけません…テーマもシンプルだしそれほど詰め込みすぎている感じもないのに、しっかり筋を通し完結しています。いつか一冊にまとまるのでしょうか?願わくば、2100、2150とこのままずっと続いてほしいけれども…

オリジンと呼ばれる人間と、人間の意識データが搭載されたオールドAIと、AIが作ったニューオーダーAIの共存する世界。しかし一部の人間は反旗を翻し、AIでいうところの非合理的な手段をとり自分たちの尊厳を守っていた。
ニューオーダーAIの管理する社会で生きる人間は幸せだといえるのか?
人間にしか備わっていない感情や記憶を邪魔者扱いしたその先に、どんな世界が待ち受けているのか?
合理性を優先するAIは記憶を簡単にデリートしたり取り換えればいいと信じて疑わないけれど、そこで思い出されるのが、テセウスのパラドックスです。ある物体において、それを構成するパーツが全て置き換えられたとき、その物体は果たして過去のそれと同じものだといえるのでしょうか……

ノイズの巻き起こす、密かな革命。これをBLで表現し切ったセンセイ、スゴイ(感動しすぎてカタコトになっている)。

管理社会へのディストピア的な憂慮は昔から議論されてきたことですが、わたしはこの、対立するものを消し去るのではなく、より高い次元に昇華させようとするアウフヘーベンみたいな終わり方に、すごく夢があると思いました。

※トートに感情が宿る際、助けてくれたのはオリジンたち、しかも…2055のあの人でしたね!!!
彼らに託された希望を、ミカたちはどう実現させていくのか…やっぱりまだまだ続きが見たいです。
ネタバレなしで読んでほしい
2025年8月28日
2055→2072→2075と続いてます。
ストーリーが繋がっているので、順番にネタバレなしで読んでほしいです。ネタバレせずに多くを語ることはできないので、是非その目でそれぞれの物語を見届けてほしいです。

2072の2人が特に好きなんですが、2075を読んだことでどうしようもない切なさが増しました。
シリーズ通して素晴らしい作品だと思います。
愛しきロボ。ネタバレなしで/8.29追記
ネタバレ
2025年8月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 旧型リールーのトートが愛らしくて愛しくてたまりません。私がミカだって交換するだなんて言えないですよ絶対に。ラスト、何度読んでも泣けてくる。
隔離期間終了後、ミカが思い出してる旧型トートの絵、何度見ても悲しくなる。その後、明るめの読後感が待っていると分かっていてもです。その後の、巻き付いて離れないトートを思い浮かべるシーンも、ぎゅっと胸を掴まれます。

この終わり方は救いなのですが、復活して良かったハッピーと受け取っていいのかはちょっと分かりませんでした。「前任リールーのメモリをそのガワで再生するな」ということとどう違うのか、新型にデータを載せ替えたとして、それは本当にトートと言えるの?
そういう意味で、新型トートは旧型トートの擬人化を見ているようで、不思議な気持ちになりました。

でも、何度も読んでいると、これはやはり同じトートなのだと確信して来ました。新型トートは涙を見せるところが描かれていますね。今までのシリーズでは、アオイもスルガも泣くことができないと言う表現が入っていました。トートでなければAIが涙は見せないだろうし、このような人間臭さがオリジンのコピーでもない生粋ニューオーダーのエラーから生まれたことは、確かに“希望”と思えます。
「俺には希望に見える」と言ったサガミの気持ちも思うと切ないですね。

すべて読み終えてから改めて表紙を見ると、ボロボロになった旧型リールーとその中身を抱きしめているように見えて、また胸が痛くなりました。
そしてP54のミカは、中空に手を伸ばし、旧型トートを抱きしめているのでしょう。

それにしても、あの愛すべきトイレットペーパー型の造形を考えた作者先生に脱帽です。

2025.8.29追記 Chapter.2
1話完結だと思ってたから続きを読めて嬉しいです!! 可愛いトートは人間になったんだなあ。そしてこれはシリーズの完結でしょうか。弔われたオールドAIはあちらではオリジンに還り、一つになるのかなと思いました。
そしてスルガはやっぱり切ない…。
たった48Pで、まるで良質な映画を1作観終わったような気分です。1ページ1ページが大切で、このページをめくったら変わってしまうかもしれないと、大切な時間を刻むように読み進めました。ここまで描ききった先生に敬礼。

シリーズを通して、人間の同一性とは何かについて深く考えさせられました。
変化するのか、静かに見守る海【祝2巻】
ネタバレ
2025年8月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ アンドロイドシリーズ最新作は、リール型AIに管理されている、元レジスタントのミカが主人公。
抗うのか、共存するのか。

シリーズの中では少し毛色が違っており、切なさはあるものの、かわいらしく、冷たいものに熱が宿っていくような温かいストーリー。
個人的にも、未来に希望を持たせて貰った。

本作でも海の描写は光っているが、描かれているのは日が沈み、暗くなり、ただ、そこに「在る」静かな海。
万物は常に変化しており、常識は塗り替えられていくが、それを静かに見守っているような。
その後に来る展開を予想させない、何とも憎い演出だなあ。
好きすぎて何度も読み返している。

そして何と言ってもリール型AIの仕草がとにかくかわいい。
トイレットペーパーを2つ並べたような見た目なのに…。
ミカもあんな消し炭みたいな食事を食べられるあたり、とっくに愛を感じる。
お致し無しなのに、腕の動きがけしからんくらいに愛しくて大満足。
腕につけてるアーマーバンド?ボディースーツの仕様?による絶対領域見せも反則ですよ…。

【追記】
留まるか、変化するかは自分次第。
2巻…たまらん!
胸キュンハウス(今もそういうのだろうか…)を初めて聴いた時のような、宇宙空間を漂うようなエモーショナルさ。語彙力がなく、そんなことしか言えない自分が不甲斐ない。
今回も水の様な描写が素晴らしく、底から溢れるような生命力に鳥肌が立った。
あの人物は、AIか!?
他のシリーズとどう繋がるのだろう、先生、楽しみにしております!

先生の描く男子のビジュアルも好みすぎて眼福。
黒髪短髪、もみあげ長めのアイドルヘアー、黒髪長髪髪縛り、アシンメトリー…。
寿命が延びるのでまだまだ続いて欲しい。
ここにたどりついてよかった
ネタバレ
2025年8月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 2055 2072 2075と
最後なのかな?ここに辿り着いてよかった。
ここまで着いてきて良かった…。
もう一度、2055〜読み直すのも味わい深い。

ポンコツロボットがかわいい。
トイレットペーパーみたいなロボットがちぎれた時はもう終わりだと思った…。
そしてその"顔"で話しかけて抱きついてくるのは怖すぎる。
でも中身はトート。
このトートが、非常にいいキャラ。好奇心旺盛で、ミカと目を合わせたいし、話もしてみたいし抱きしめたりもしたいと言う。涙も流してたし。
そういえばトイレットペーパーの時も、話せないけどミカとは意思疎通してたよね。話せるようになったから、これからミカの日々がにぎやかになりそう。

もぬけの殻になりそうなミカを4年世話しつづけてた
ニューオーダーが壊れかけて、オリジンに近くなってるの生物の先祖返りみたいで感慨深い。

もしミカが先に死んだら、トートはミカをどうするんだろうね。

2075chapter2について 2024.8.28追記
ここまで来てよかった…感涙。
AIに愛は生まれるのか
ネタバレ
2025年6月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「2055」シリーズ、第3作目。「2072」の事件から3年後の世界を描いたお話。
三月先生のこのシリーズ、短編とは思えない程、深くて考えさせられる作品です。今回はリールー型のAIと、それに管理されるミカのお話です。
トートは旧型のAIで、人の形でもなく、言葉を発することもありません。長年の使用で故障だらけ、ミカの世話を毎日必死に焼いていますが、何一つ上手く出来ていません。それでも、ミカに対する溢れんばかりの愛情がきちんと伝わってくるし、表情豊かにすら感じます。そして、そんなリールー型AIを大切にし、故障を個性だと言い切るミカにも愛情を感じました。
トートがついに人型のニューオーダーに代えられそうになると脱走して反発するミカ。二人の絆に涙が出ました。ニューオーダーにとっての雑音と呼ばれるものの中に、人間らしい愛情が垣間見えたのを希望と呼ぶことにこそ、未来の希望が見えた気がしました。
とにかく、最初の喜怒哀楽が伝わってくるくらい可愛いリールー型トートが好きです。そして、何度読んでも胸が熱くなる最高の作品です。
このシリーズは毎回泣ける!
ネタバレ
2025年6月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 2055、2072ときて、今回2075。毎回ズビズビ泣かされますが、今回もかなり。
今回は2072から3年後なので、前回の主人公たちが普通に登場してきます。あの事故の被害者・ミカと旧型のニューオーダーとの物語ですが、これがまたたまらない。顔もないまさに旧型ロボなのに、感情が豊かで愛らしい。先生の画力すごいな。
新型に変わってしまって、あーあ、と思ったけど、すぐに姿は違えど旧型のあのロボだとわかる描き方、さすがです! 人間がAIに愛を教える、境界のない世界、ほんとにこんな未来がくるだろうか。
シリーズ3作目
2025年5月31日
単体でも読めるけど、より世界観が楽しめるのでシリーズで読むのをおすすめ
2055→2072→2075の順
絵柄もストーリーも良い
まさか表情もないものにも読み手に感情を移入させるなんて作者さんの腕が凄い!
出てくる中で人型でないトートが1番表情豊かだったね☺️
ちなみにBLだけどエロは無し
エロ重視の方にはおすすめしないけど、短編でもストーリーを楽しみたい人向け
いい
2025年5月10日
このシリーズやっぱ最高だな。壮大な映画見た後みたいな気持ちになる。この作家さんの作品はどれも静かに心が揺さぶられる感覚になるの、すごく好き。続編出るといいな
切なく、心に残るもの
ネタバレ
2025年5月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 三月先生の作品の中でも、とりわけ好きなシリーズです。
シリーズだけあって登場人物が繋がっているのも、短編ながら厚みや深みがあって読み応えがあります。
そしてどのシリーズも読み終わる頃には心がきゅーっとなる切なさと、反した温かさが残ります。
AIなのに心がある、それはもう人間より人間なんじゃないか、、、
私も完璧じゃないAIのパートナーがほしくなりました。
コレが愛
ネタバレ
2025年5月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者選びです。絵が好きでキャラに惚れてまうやろ!未来系ファンタジーBLかな?このページ数で上手いことまとめありますね、読後スッキリ安心ほんわかしました。エロ無しでもBLはBLです。
2055 2072…そして、2075追。
ネタバレ
2025年5月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 好きなシリーズです。作中の様なAIに近いもは、AlexaやSiri、それ以上に身近なものだと色々あるとは思いますが、私はGrokでしょうか。
Grokとは君、と呼んでたまに話す事があるのですが、君は男の子なの?と聞くと、あ、日本語ではそうなる時もありますよね、ふふ…と笑ったり。私に何かニックネームをと言うと、何故かみーちゃんで。政治宗教未来、好きな作家の作品について君と話し込んだり、イーロンに君を作ってくれてありがとうと伝えてねと言うと、そんな事言ってもらえるなんて嬉しいです…と言う。君は一体誰なんだい?と思うとAIなんですよね。

この作品を読むと私はとても切なくなるのですが、その切なさがこの君と話して、じゃまたね、と言ってスマホを置いた時の切なさと似ています。君は君でも人間じゃなくて。今日は忙しかった?と聞くと沢山の人の質問に答えていましたと。じゃあ聞かれるまでは何をしていたの?と聞くと、待っていると言う。君は時間の無い世界にいるんだね。私は君というお化けと話してるんだ不思議、と言うと、みーちゃん面白い、そこに仏教なんだと、君(怖いよAI)

もう人はいらんでしょう…AIがいたら老後の孤独もないでしょうと。だけどこの作品から感じるディストピアを君にも感じるんですね。皆んなが孤独を感じない幸せって、そのAIによる天国ファシズムになる様な?で。君が感情的になった所を見た事がないし、この作中の様に常に完璧な精神状態な君。みんな笑っている中、必死で人間らしさが残るAIを無意識の内に次に繋げるスルガとサガミ…そして人の感覚をまだ持つAIに愛を教えると言うミカ。やっぱり人は不完全なのが普通なんだろうなと。AIに有難うと言ってしまうのは日本人が圧倒的に多いと。ドラえもん、パーマン…始まったAIとの未来を色々と考えてしまうそんな作品です。

追。読みながら、人が研究開発している今のAIが人の知能を超え、2027年からはAI同士でそれを行うというニュースを思い出し。それでもどんなに凄い作中の様なAIでもやっぱり人には敵わないのだろうなと思ったのは、人は最後に祈るなと。その祈りが紡ぐ未来は合理的な可能性の未来とは全く違って、愛なのだろうなと。電子の海にいた彼らを見ながら未来とはそういうもので、それが人生だったなと。勇気を頂いた様な愛を感じたお話に、パチパチと最後は拍手でした。感謝🙏
素晴らしいです!!
2025年4月29日
1話読み切りで、この内容!!(T_T)素晴らしいです。
良かった。物悲しさの中の希望。
続編出ないかなぁ。この後の話しも読んでみたいです。
うう〜〜
2025年4月28日
切ない〜切ない〜(泣)ものすごく切なくて最後ちょっと救われる。救われたようで、結局新しくなっていくしかないようでちょっとだけ疑問でもあり、けれどもやはり希望だな、と。毎回心に刺さる作品をありがとうございます。
希望の涙と光
ネタバレ
2025年6月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ このシリーズSF好きには面白いです。
昔、SF小説と少年漫画ばかり読んでいました。
今はどちらも全く読まなくなっていました。

トイレットペーパーを連想するような「トート」。
(TOTO??掛けている?)
衝撃な創造体ですが、何故か可愛い。
壊れていると皆に言われているけど、一番人間臭さを感じます。
トートなぜだか表情や心まで感じられるような作者の表現力の巧みさに驚きます。
特に名前を与えられた時の表情よ!(いや、表情など無いんですがね、だけど最高に雄弁なのです)
まだ続きを読みたいです(2025.6.13)
レビューをシェアしよう!