読んでいて背中を下からスッと撫でられるような短編集
フェティシズムとはただどうしようもなく存在するもので、誰かに理解されたいものでもなければ批判される筋合いのものでもない、と基本的には思っています
ただモノによっては自分という輪郭を超えて他の誰かに触れれば犯罪にもなりうるし、生理的な嫌悪感を持たれるものもある。
だからこそ大多数の人は触れないように、口外しないように秘めている。
1話目しょっぱなからその嫌悪感を感じながらも読み終えたあとに改めて単話のタイトル(『逃げ水』)を読んでそのセンスに脱帽・・
4話の蛇を愛する男の話はとても惹かれました。
最終話の『死滅回遊』にいたっては見事としかいいようがないです。
もとは回遊先に適応できなくて死んでいく魚たちを表す言葉。
行きつく先には絶望しかなく、どこか耽美で文学的な響きも感じます。
1話目に出てきた彼女のお話なのですが彼女もまた、
無意識に死滅回遊の流れに乗ってしまった1人だろうか…
そしてこれ実はすごい回収なのではなかろうか…
作者さんの『応天の門』が大好きでずっと追いかけていて
こちらも気になっていたので読みましたが
心の中に深い森をもつ者たちのひっそりとした営みや葛藤を
これほど絶妙に描かれる先生の感性に敬意を。
どの話も少しずつ繋がっているのも何気に上手く、
絵のクオリティは言うまでもなく。
ただ好き嫌い別れそうなので万人におススメはしかねます・・・気になられた方は是非。
※追記・・試し読みがない事にレビュー後気付きましたので1話目タイトル追記しました。4話は『アンダーグラス』