この物語の私の存在は戦後の日本に組み込まれたありがちな男で自分は上澄だけバンドやジャズを楽しんで美少年が重くるしくなったら容赦なく切るだけでなく自分の後ろめたさを振り切る様に砂をかけて犯し踏み躙ります
自分が悪いわけではないお前がオカマだから悪いのだと
私が踏み躙ったものは美少年だけでは無い
継がれるはずだった舞踊 何代も続いたお家 美少年の実らない切実な恋の願い 戦前の誠実な懸命な人々
自分の選んだもの(バンドや音楽関係の就職先など)だけが至高であると言うありもしない矜持を振り翳して自由を謳歌しながら彼女には品や奥ゆかしさを要求し最後まで自分を省みず時代のせいだ仕方ないと流して責任を一切取らず美少年の犠牲はなかった事にしてしまった
戦後の教育や風潮が産み出した得体の知れない怪物がこの物語の私なのではないかと思うのです
この得体の知れない戦後の日本を包む不穏な空気が産み出した怪物が本人は自分はごく普通のまともな人間だと思いながら年老いて亡くなるのかと思うと恐ろしくてたまりません
作者さんの漫画にする能力がすごいです
男性の私小説を女性の漫画家さんが描いた事で傲慢な性格の男性がもつ自分以外の人間が自分の犠牲になるのはしょうがない事という不遜な感じがより鮮明になって良かったです