鉱石を食す青年と研究者の旅路。この作者さんの魅力、自分は何に惹かれて読んでいるのかと自然と考え込んじゃう。有機物、無機物が人間の想像力の中で、この世界以上に深く交わる物語。自分は自然物で染め物をするんだけど(植物や土など)、組み合わせは無限にあって、でも原理を調べると科学で成り立っていて、この世界の言葉で説明できるものばかり。なのに染め物をしている最中や出来上がった色を眺めると宇宙かってくらい深い広がりを感じる。そしてそれらを研究してきた先人たちへ思いを馳せる事が出来る。そう感じられる人間の心もまたとても深くて広いんだろう。
柘榴石についての会話からイーリスのモノローグの流れは一番好きなシーン。俺たちは違う、ではなく似ている部分への優しい眼差しがあのなんてことのないベントの返答から伝わってくる。
自分は他の人間とは違うってままで終わらず、イーリスが自分が生まれた世界を新しい気持ちで受け入れられたのはベントの存在があってこそで、その違いも似ている部分も全部がこの世界を一層美しくさせているのだと感じる。一は全、全は一の循環を感じる。
生き物がわかり易く躍動してる漫画的な面白さはないですが、物語としての躍動感は凄く伝わります。表情の変化もとても微細なのですが、この2人が主人公なので仕方なし。
初めて琥珀というものを知った時に多数の人が感じることって、その中に閉じ込められた時間へのロマンではないだろうか?この作者さんの魅力のひとつが、琥珀のような長い時間の静かな流れを物語にしている感覚かもしんない。静かな感動がこの胸にある。