手塚治虫の大人向け漫画。成年向け漫画のような直接的な表現はないが、☓行為は男女間、男性間、動物と人間の間(実際あったかは定かではないが、読者が「それ」を想像するよう意図して描かれたであろう一コマはある)で行われる様子が描かれている。その全てに主人公・結城がいる。彼の魔性ともいえる魅力と、殺しを厭わないソシオパスとしての性質が、周囲の人間を、果てには2つの国を揺るがす。
この作品は1970年代後半の連載当時の日本の世論が強く反映されている。ベトナム戦争で毒ガスが使用されたことへの恐怖と批判、在日米軍基地で日本の主権が制限されることへの怒りと非難。これらが口を閉ざされた島民の復讐を代行する結城の行動源として、結城を追う刑事のセリフとして表現されている。混沌の時代に生み出された愛憎絡まり合う傑作を、日本人には是非読んでほしい。