憂鬱な朝
」のレビュー

憂鬱な朝

日高ショーコ

暁人の成長物語、桂木の再生物語。

ネタバレ
2020年8月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大作なので購入を迷いましたが、桂木があまりにも好みなので全巻パック買いしてしまいました。冷ややかな眼も、上からな態度も、むしろ好き。鉄仮面の下から覗いてしまう切ないお顔も、拗らせがちな面倒な性格も、本当は人をよく見ていて公正なところも、全部好きすぎる……! オールバックからの乱れ髪とか、麗しい洋装からの下着や寝間着は和とか、ギャップの破壊力も凄い。
そして、読み進めていくと今度は暁人の可愛さに撃ち抜かれました。序盤は空回りして険しい表情ばかりだったのが、成長して余裕が出てくることで、かえって年相応の十代らしいお顔や生来の純粋さが見えてきて、もう可愛くて切なくて可愛くて切なくて。
この二人がお互いを想いあっているだけで充分に眼福ですが、ストーリーも重厚。「好きだから家柄なんて……」というだけの安直な話ではありません。
旧大名である久世の当主は、屋敷の使用人はもとより旧領地の人々からも必要とされ、責任を負っている。考え方は新しいけど、お子ちゃまで視野の狭かった暁人が、当主としての自覚に目覚めて力を発揮しつつ、桂木の手も放さずに共に生きる道を求めて行きます。厳しい現実に突き当たっても、受け止めて乗り越えて前に進める暁人のしなやかさがカッコいい。
一方で、久世先代との確執に囚われて前に進めない桂木は、暁人に掻き乱されて打ちのめされて、一度は自分を見失ったところから再生していきます。ここで桂木を支えるのが暁人だけでなく、彼自身が20年間の壮絶な努力で培ってきた知識や能力や人間関係が力になっていくのが素晴らしいです。自分らしさを取り戻した桂木の、これまたカッコいいこと……! 主人公がどちらもカッコ良すぎて最高です。
そして、ラスト……というか最終話の一つ手前なんですが、二人の選んだ答えが、個人的に最高にハマる結末でした。桂木がホテルの部屋に来たところからのシーンが美しくて美しくて……!
最後まで期待を裏切らない、素晴らしい作品でした。10年もかけて作り上げてくださった先生方に感謝します。
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