嫌い、大嫌い、愛してる。
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嫌い、大嫌い、愛してる。

ARUKU

濃密な時間と人生と物語

2020年11月1日
作者さんの作品読むの3作目です。毎回思います。作者さん、天才。すごい。読書家なんでしょうね、毎回作品に古典小説が登場します。作品自体も、マンガの体裁をとってるけど、文章に起こしたら文藝春秋に載っててもおかしくないですよね。物語の冒頭は辛い描写が多くてどうなるのかと思ってたら、人物の視点が変わって凄みが増してきて、突然弾けて、ふたりだけの終焉を望んで連れ去っていく。昭和50年代のスマホなんてない時代だからこそ逃避行が可能で、その先のない道行きが美しすぎる。透明になっていく、手のひらからこぼれ落ちてく命を前に、海辺で昔の愛の呪いの言葉を思い出すシーンには本気で泣きました。
作者さんは、小さなコマにポンと素敵な言葉をいくつも放り込んでくから、もう読者は息もしないで一コマずつ追っていくしかありません。一冊だけの作品なのに、何冊もあるような濃密な時間と人生と物語がここにあります。この一冊の作品が、他の一冊の本と同価格で売られているのがおかしなくらい。
これも読者を選ぶ作品です。合わない人には合わないだろうと思います。私は、作者さんの作品に出会えてほんとうによかったです。。。
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