ニューヨーク・ニューヨーク
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ニューヨーク・ニューヨーク

羅川真里茂

20数年前のアメリカの性指向差別を経て

ネタバレ
2020年12月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォローしている方がとても素敵なレビューを書いていらしたので、20年以上前の作品ですが読んでみました。
うわわわわ、こんなBLの名作が花とゆめ連載で描かれていたとは!友人や家族とのカムアウト後のシリアスな拗れ、ジェットコースター的展開で途中かなり暴力のキツいシーンも多く、ラブコメ胸キュン全盛の今の少女マンガ誌には連載しずらいですよね、当時の白泉社だったから掲載できたのかも。(もちろんラブコメも胸キュンも私は好きですが!)
20年以上前に、その当時のアメリカを舞台として描かれているので、あの時代、性指向と結びついていたエイズへの恐怖感と差別がとてもリアルです。同じ過去のアメリカの性指向差別を題材のひとつとしてる吾妻先生の傑作「ラムスプリンガの情景」シリーズを思い起こさせました。ラムスプリンガの少し後の時代が当作品になりますね。この作品のような葛藤の時代を経て、20数年後の今現在、性指向についてかなり法的にも認められている所が多くなったのだと思います。
今、住んでいる欧州の国では、法的に認められたゲイカップルはかなり普通にいて、性指向について差別をすれば訴訟のリスクさえあり(だから職場では発言に気をつけなければいけない)、教会においても宗派によって結婚は認められるようになってきています。作品中、Gay marriage の美しいシーンがありましたが、20数年後には、普通に教会で結婚できるようになってるよーって、彼らに教えてあげたいです。日本ではまだ保守層が多いのかな。こんなにBLが市民権を得て読まれてる時代だから、きっとフラットに普通に相対することができる人が増えてるといいなと思います。
作者さんの作品、「赤ちゃんと僕」を読んだ当時はバックパッカーで子どもは嫌いで絶対に産まないと思っていたくらいなので、当然その時の自分には合わずに、他の作品も読まないままでした。まさかの40歳半ばで男の子3人の育児に追われてるいま読めば、きっと印象が全く違いますよね。そうやって読まず毛嫌いしていた作品をこれからポツポツ拾ってみようかな。
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