ココロニイツモ
」のレビュー

ココロニイツモ

たうみまゆ

憶えることも忘れることも大切な権利

ネタバレ
2021年1月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 中古レコード屋きつね屋を営むショージと一緒に暮らすタイは、一年前の真冬、ゲイバーの裏でボロボロの状態で保護されました。一度聞いた曲は決して忘れない不思議な特技があるタイは、その特技ゆえに、ショージと一緒にほんわかと暮らしています。地下鉄の乗り方や『好き」という感情さえよくわからない子供ようなタイは、きつね屋の2階で雑貨屋を営むさとこさんや、ゲイバーの達郎ママにも大切にされています。一緒に暮らすショージへの気持ちが「好き」なのかを、周囲の人におずおずと確かめるタイには、逃げ出さざるを得ないような過酷な過去がありました。好きという感情さえ雑念とする世界で生きざるを得なかったタイの「好き』を、最後にショージがガッツリと受け止めてくれるお話です。『素晴らしきこのクソ世界』に通じる、不愉快かつ有無を言わさぬ非情な背景がストーリーをしっかり支えていて、読み応えがあります。
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