はるのうららの
」のレビュー

はるのうららの

三崎汐

子どもと大人の狭間で目を閉じる

2021年3月30日
「中学生の閉鎖的で息苦しいかんじが好き」という作者さんの嗜好が遺憾なく発揮されていて、その閉鎖空間に取り込まれて、「苦しいよー」と途中で何度も思いました。そもそもは、何かでこの表紙を見かけて、「何これ?」と気になって(いろんな意味で目を引かれて)、カートに入れたままになっていたのですが、読後にこの表紙を見ると、中身が上手く表されているなと、タイトルと表紙絵に「お見事」です。たまに「普通」が違っている春希と春介の「普通」が決定的にズレたときの、春介の涙と春希の笑顔に胸が痛みました。それがあっての、本編ラストがとても好きです。そして、「あのとき」の美山くんを知ってから読み返すと、また一味違ってきます。美山くんはどうやって自分の気持ちに折り合いをつけたのかな…。余韻たっぷり、とても良い作品だと思います。
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