ただ好きだから一緒にいたいじゃダメなの?




はあ〜色んな点で深い物語でした。
作者さんによると、「恋愛」というテーマを1番の重点としてこの作品を描かれたみたいですが、自分的には人間の「性の流動性」も凄く大きなテーマとして扱われているなと感じました。"一般的"に人間の「性」は二分化("男"か"女"か)されがちだけど、実際はノンバイナリーです。性的指向も同様で、流動的です。人生のどこかのポイントで自分の性自認や性的指向を改めて考えたり、変化に気付いたりする事はよくあるし普遍的です。この作品の中の大伴恭一は、そういった自分のアイデンティティを模索し葛藤し踠いている過程にいる1人の人間として描かれているんだろうなあと思って読みました。でも特に恭一みたいな世間体とか社会の目を気にするタイプは、そういう事実に直面した時自分の素直な気持ちを優先出来なくて、彼の本願と彼の保守的な価値観が衝突して雁字搦めになるんでしょうね。まさに窮鼠だ。四面楚歌ですね。現実、恭一の様なタイプが多いのかな。
と、冷静に客観視してますが、実際はめちゃくちゃ感情を掻き乱されながら読みました。僕もqueerなので、どうしても今ヶ瀬の視点で読んでしまいました。本当に辛かった。彼が10年以上も先輩を好きで好き過ぎて、幸せなんだけど苦しい思いの方が絶対多いんです!辛いからもう苦しい思いはしたくないから先輩から離れて忘れようとしても、その感情をどうにも出来なくなっている彼の美しいのにそれが純粋なだけに見苦しい姿を見ると、胸が締め付けられます。今ヶ瀬と先輩のぶつかり合っているやり取り、毎回悲しくて泣きました。先輩が、「ゲイなら...」とか「同性愛者はどのくらい深く愛するのか...」とか思ってるたびに、ムカつきます(笑)お前の目の前に良い例がいるだろう!!!と叱咤したくなりました。愛だの恋だの将来だの、理屈で纏めようとしたって無理ですよね。ただ一緒にいたいから一緒にいるで良いのに。まあこういう定義付けや価値観は個々人によるので恭一を責めてもしょうがないんですが。。
でも今ヶ瀬と恭一の言う「絆」って何だろう。
あと、拘って考えたんだろうなと感じる作品のタイトルにも感動です!窮鼠は〜と俎上の鯉は〜のどちらも!恭一と今ヶ瀬の切羽詰った状態・状況をうまく比喩的に表現してると思いました。
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