VOID
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VOID

座裏屋蘭丸

お互いの心の拘束が解ける時

ネタバレ
2021年4月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 冒頭、雨の降る葬儀の一瞬が映し出され、第1章はマキの家にヒューマノイドのアラタが運び込まれ、起動したアラタがマキに「ごめんなさい」というところから始まります。アラタは、かつてマキの愛したレンの遺伝子と記憶から作られた愛玩用ヒューマノイドでした。刷り込み機能によってマキのそばにいたいと願う一途なアラタをマキは手酷く扱います。それは7年前、マキの恋人だったレンが、実は異性愛者であるマキの兄を愛し、兄によく似たマキをその代わりとしていたことに深く傷付いていたからでした。レンにそっくりな顔、そっくりな声のアラタですが、健気で一生懸命なその姿にマキはアラタとレンとを重ねることができなくなってゆきます。過去の無いヒューマノイドの未来への不安と、過去の苦しみに執われ続けて未来を見ることのできない人間の心とが次第に寄り添うようになり、マキはアラタの自分への気持ちが刷り込み機能によるものかを知る為に、刷り込み機能の解除−VOIDを決意します。圧倒的な画力、映画のような美しく印象的なコマ割りとカット、力強いストーリーの運び、華やかさはありませんが、心情が真っ直ぐに伝わってくる素晴らしい作品です。
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