このレビューはネタバレを含みます▼
一つの田舎町を中心に紡がれる短編集。『隣の美人草』高校の部活で負傷し入院した瑞樹と、隣のベッドの謎めいた美人のお兄さん深山とのお話。『8月のロスタイム』大学生活最後の夏休みに、1ヶ月限定の恋人としてやって来た蓮と翔馬。ふつうに生きることの難しさとその葛藤が描かれます。背景となる田舎の夏が眩しいです。『落ち葉あふれて』5年前に恋人の高三郎を亡くした恭が、その墓前で高三郎の甥である紫苑と出会います。二人は手帳に遺された、高三郎が恭と一緒にしたかったことを一つずつしてゆきます。高校の3階のベランダから見るプールに落ちる秋の夕陽が印象的です。『枯れ木に蕾』その1年半後、進学で上京した紫苑は恭の家に居候します。恋人を亡くし枯れていた恭の心に新しい葉が茂り、恋の蕾がつきます。『冬来たりなば』母子家庭という境遇にありながら現役での国立医学部を目指すシュウと、幼馴染で身体の弱いコウとの受験前後のお話。カーブミラーが良い仕事をします。どのお話も最後にメッセージとおまけマンガが付いていて、さらに最後のおまけは全CPが一堂に会します。巻末には舞台となった町の地図もあり、最後まで楽しめます。