春の修羅【コミックス版】
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春の修羅【コミックス版】

miso

降り注ぐ、春は修羅、春は恋

ネタバレ
2021年5月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 母親の再婚でその故郷の田舎町に転校してきた春生(はるき)は、引っ越したその日に雨の中に佇む篝(かがり)と出逢います。地主の次男でやりたい放題の篝から下僕になるよう命ぜられた春生は、呼び出されては連れ回されるようになります。小さな町で学校で神様のように存在し、燃え尽きんとするかのように喧嘩や暴力行為を繰り返す篝は、その昂ぶりを吐き出すかのように春生を抱きます。神様に従うことで心の平穏を得ようとする、蒼ぐろくてがらんとした内面を持つ春生と、春生の為だけに神様でいようとする、燃え盛る修羅のような篝。心の居場所の無い孤独な二人の高校生の表裏をなす強さと弱さ、憎しみながら愛し、畏れながら慕う、その揺らぎが相手への確かな想いとなってゆきます。天体や宗教など宮沢賢治の『春と修羅』をモチーフに、誰にでも平等に訪れ、また過ぎ去ってゆく春という季節(年頃)の残酷さと思春期の葛藤を修羅として描く、にがくて青くて不器用な恋物話てす。
『egg or chicken?』施設で一緒に育ったアジヨシとリョーちゃんのお話。おまえが笑っていればそれでいいと言い切るリョーちゃんがなんとも男前な著者のデビュー作品でず。
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