あの日、隣で歌っていた 【短編】
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あの日、隣で歌っていた 【短編】

早寝電灯

一人の為に歌いたい

ネタバレ
2021年6月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 売り出し中のバンドのギタリスト清明は、ある日酔って泣きながら記憶を無くし、翌朝目覚めると知らないコートを羽織って寝ていました。コートを貸してくれたのは隣の部屋に住む大学生の英志でした。良い服を着ているものの、何も無い部屋に住む英志は、幼い頃に母が歌ってくれた子守唄のCDを一枚だけ持っていると言います。バンドの活動規模が大きくなることに不安を覚える清明は、殺風景な部屋のたった一枚のCD、たった一つの大切にされる曲に想いを馳せ、そこに自らをも重ね合わせてゆくのでした。自分を取り巻き、自分を見つめる無数の目が怖い清明は、その中に英志の目を見つけることで安堵します。短編とは思えない読み応えのある作品です。
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