羽生山へび子作品集
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羽生山へび子作品集

羽生山へび子

たくさんの人に読んでほしいです

2021年6月20日
作品集はお値段張りますが、シリーズがまとまって入っているだけでなく、コミックス未収録の作品も入っていますので、お得でおススメです。へび子先生未読で何か試し読みを~だと、「夜明けのブルース」が読みやすいかなと思います。個人的には「わかば荘」シリーズが大好きです(作品集Ⅱ)。
昨年7月に初めて読んだへび子先生の作品が「わかば荘」シリーズでした。「今どき金髪リーゼントだー!昭和は昭和でも親世代!?」と少しだけ面食らいましたが、お話はとても面白くて、あっという間にへび子先生の世界に引き込まれました。
その数日後、へび子先生の訃報が各出版社から発表されました。私が初めて先生の作品を手にしたときには、先生はこの世にいなかったのです。出会ってすぐの作者さんのことでしたが、そのタイミングが何とも言えずショックでした。先生の長年のファンの方のコメントやブログも読み、作品だけでなく、先生ご自身が深く愛されていたことが痛烈に伝わってきて、やるせない気持ちが募りました。私自身、15年来愛したバンドのボーカルが日本公演前に亡くなり、とてつもない衝撃を受けたことがあります。家族でも友達でも恋人でもない、でも、ずっと心の拠り所でした。同じように(と言っていいのかは分かりませんが)、へび子先生を亡くしたファンの方の想いに胸が痛みました。
それから、先生の作品を全て読ませてもらって、不偏の優しさと温かさをどの作品からも感じました。この作品集が発売され、単行本未収録の作品も読みたくて購入しました。巻末の出版社さんの言葉にある通り、優しさと温もりだけでなく、「懸命に生きる人々の愛や苦悩、人生の輝き」が間違いなく詰まっています。その姿は愛おしくもあり、また勇気付けられるものでもあります。この先も読み返したいし、実際この1年、何度も読み返しました。心の深いところで支えてくれるような作者さんとの出会いは、本当に宝物です。もう、その手で描かれる新しい作品を読むことは叶わなくても、形として残っている作品が、これからも多くの人の元に届くといいなと思います。遺作となった「あれはカモメと誰かが言った」のプロットを読み、当然ながら、先生が描き切るつもりでおられたことを思うと、改めて残念でなりません。1年経っても悲しいのが本音です。羽生山へび子先生、素晴らしい作品を残してくださり、本当にありがとうございました。大好きです。
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