羊の皮を着たケモノ【SS付き電子限定版】
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羊の皮を着たケモノ【SS付き電子限定版】

九號

二度見必須の予測不可能な展開が神'2巻追記

ネタバレ
2021年6月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙から傑作の予感がし、読み出したら目が離せなくなるほど巧みな、予想のつかない場面展開。何を考えているのか大地同様知りたくなってしまう魔性の男辰巳翻弄されつつ、この2人の着地点を見たい!という気持ちを維持させる無駄のないストーリー展開に圧倒されてしまう作品です。
ここからネタバレです。
私は読んでるうちに、最初は辰巳が大地が発する警戒心を解くよう、2人の間にある見えない壁を巧みに操り警戒心を解かせてコントロールをして(詐欺師ですから)、用が済んだらサヨナラしようとしていたのが、辰見が自分の生い立ちを話し、偶然似た境遇で育った大地が辰巳に強いシンパシーを感じ、それに共鳴してしまった辰巳が大地との間の壁をコントロールできなくなって、それまでの自分なら放っておくであろうクラブに助けに行ってしまう、助けた後、挑発半分とはいえ抱いてしまう、という心の動きに戸惑い(この時点で堕ちてるってことですよね)、このままでは自分か大地に何かが起こることを危惧して、ワザと捕まって、大地との間に厚い壁を築いたように感じました。
出所後も、まともじゃない自分のいるコッチ側と正しい道を歩んでいる大地のいるソッチ側とを隔てる見えない壁を築いていた辰巳が、大地が辰巳に抱く共感と愛情でこじ開けた心の壁の細い穴が立て続けに起きるエピソードにより次第に大きくなり、同時に壁も薄くなって、最後に夢で心象風景を見たとき霧散した、そんなイメージが湧いてきました。こんなイメージが湧いたのは初めて。それくらい2人の心の動きの描写が素晴らしい傑作!【23.12.30追記】2巻、1巻では謎めいていた辰巳の内心が辰巳目線で描かれて、ああ大地は辰巳にとっての光だったんだなぁと。一度は捨てた表の社会で、おのれの良心を信じて決して裏切らないと信頼できる大地と生きる安心感は何ものにも代え難いはず。守りたい、手離したくないものができた辰巳を、悪しき者は弱みと捉えてつけこもうとし、せっかく大地との間の見えない壁が取り払われたのに、大地を守るため再び辰巳が薄い膜を張って闇の世界に身を投じる決断をしたのか?と思いきや二度見必須の急展開に放心…辰巳が大地を守り、悪を駆逐する一筋の光が灯ったよう。人が更生に向かう内面描写が流石。そして描下ろし最高!辰巳ったら逮捕後も大地のことを考える日々を送ってたんだなあとニヤニヤ。なにげに橘さんて恋のキューピット?
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