夜が終わるまで
」のレビュー

夜が終わるまで

西田ヒガシ

画面から、ほとばしるもの

ネタバレ
2021年7月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 捜査検事の日浦は悩まされていた--傷害事件に巻き込まれ消息不明となった司法修習同期の弁護士・影山が、毎晩やって来ては自分を抱く夢とも現実ともつかない感覚に。会いたい…その一念で事件の真相と影山の行方を追いかけ暴いた真実とは…?
伝奇やホラー、オカルト、ミステリー、はたまたSFやファンタジー系がお好きなら、影山の弟が家のあちこちにぶつかっては小さい傷を作っているというお馴染みの描写を見て「二人羽織的なアレねー」とピンと来そうですが、その要素が、それをなさしめる人の情念の底深さを感じさせ読み手の官能を突きます。それは同時に、生死を推し測る唯一の手掛かりでもあるため、影山が現れなくなり焦燥感でいても立ってもいられなくなった日浦にこちらの感情も同化し、緊張を孕んだまま一気にクライマックスまで導かれました。
日浦目線で描かれる2人(3人)の表情は、あのシーンであってさえ抑制が効き淡々としているというのに、たとえば昔のアルバムを見ていて心情を吐露する場面では、どれほどの激しさとひたむきさで互いを欲しているかが画面からほとばしるように伝わり、その対比に胸が熱くなりました。
熱いと言えばレビュアーの皆さんの視点と表現力がすごすぎて胸熱です。確かに魂が呼びあってました!日浦のパンむぐむぐ、嬉しさを我慢しきれず口元が歪んじゃうニヤ顔(たまりません)!西田先生のお宝コメントは最高ですし、この作品は「愛読書」ですし表紙絵は待受にしたい!はぁ、拾いきれない…(今さら自分がレビューする意味あるのか…?)
自分がフォローしているある方が別の作品のレビューの文頭に、ともすると「好きすぎるとレビューしそびれてしまう」と仰っていました。まさに…! レビューを書くと自分の中で一つ区切りがついてしまうのか、作品に一旦サヨナラするような気がして寂しくなり、思い入れのある作品ほど片手間にレビューしたくはありません。去年約10年ぶりにBLに戻り1年間リハビリのように読んできた中で再会した西田作品の数々。レビュー始めたばかりで早くも好きな気持ちとの板挟みに…。
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