鬼は笑うか
」のレビュー

鬼は笑うか

木村ヒデサト

“生理男子”の境遇に心抉られる至高の1冊

ネタバレ
2021年7月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ なんて素晴らしい作品なんだああああ!
読了後、この作品のタイトルが持つ意味、そこから連想される作品のテーマ、全て繋がりました。冒頭で、柏瀬が教科書を読むシーンで読んだそのフレーズ、そして終盤で星谷の元カノ・ミツが星谷に言った言葉、あ、すごい繋がった、と思いました。どうしようもない事、いずれ終わってしまうかもしれない事、でもそうなって欲しくない。だったら手段なんて選んでる場合じゃないし、どうにもならない事だからそれをどうにかしようとするんですよね、きっと。絶対に手放したくないから。予測できない未来にあーだこーだ悩んでいたら、そりゃあ鬼も笑いますよね。
絶望的な気持ちと安堵する気持ちがドロドロと混ざり合ってすごく複雑な気分です。でも、最高に素晴らしい作品でした!え?どういう事?と思わせるミステリータッチな作品の雰囲気も良かったです。辛いし、痛いし、悲しいし、切ないし、ムカつくし、沢山の不条理が詰まった作品でどん底まで落とされそうな気分になりますが、文学的で独特な世界観を持った心に強く響く1冊です。容赦なく立ちはだかる不条理と格闘し葛藤し、それでも懸命に生きようとする青年2人の姿は本当に美しいです。この作品に出会えて良かった〜。
BL AWARD 2017 BEST DEEP部門3位の作品です。
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