百草の裏庭
」のレビュー

百草の裏庭

青井秋

やっぱり読み心地がいい世界

2021年7月7日
作者さんの「爪先に光路図」がとても好きで、他の作品も読んでみたくて、フォローさんのレビューからこちらを選びました。(「爪先~」の魚のお話、フォローさんが書かれていた”想いを寄せる”の可視化が”寄り添って泳ぐ魚”というのがとてもしっくりきました。)
この「百草の裏庭」もとても良かったです。じんわりと染みてきて、心地よいです。ほんの少し漂うようなほの暗さも、むしろ落ち着きます。
表題作と他短編4話、どれも違った趣を味わえます。
表題作は、友情(友愛)から恋が芽生えるのでしょうか…。と考えるのも申し訳なく思えるような、2人の穏やかで静かで満ち足りた時間に私も満たされます。2話と3話の間に挟まれた番外編で、続きを知ることはないと思っていた物語を、一緒に読める人がいることの喜びが浸透してきて、胸が詰まりました。
フォローさんが気に留めた「stalks」の意味を調べてみると、大まかに二通りの意味があったのですが、その両方を落とし込んでいると思えるストーリーに感動してしまいました。恋を種付けされた庭師は、より一層優しく愛しさを込めてカンナを(草花を)大事にし、次の花を咲かせるお手伝いをするのだろうなと私は思いました。そして、それに応えるように美しい花を咲かせるのだろうなと。
他のお話もどれも好きでした。「旅の途中」の作中の王子と羊飼いのお話も別枠にできそうな物語で…それ含めて、何度も反芻したい短編集です。
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