羅城恋月夜
」のレビュー

羅城恋月夜

朔ヒロ

隔てるものがあろうとも止まらぬ想い

ネタバレ
2021年7月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「明烏夢恋唄」と同じ妖怪専門遊郭・かすみ楼が舞台の、鬼の茨木と陰陽師である紺の愛しくも切ない恋の物語。
もーー大好きでした!先生の美しい絵や世界観に彩られる鬼や妖怪といった人外描写が素晴らしく好みで、どっぷりと浸って読む事ができました。

人よりも妖怪が好きな紺は父の反対を押し切りかすみ楼の結界修復を請け負います。
そこで出会ったのは一度見かけて目を奪われた美しい4本角の鬼。元男娼であり現在は楼の用心棒を務める茨木でした。
結界修復の傍ら、茨木の個人的な頼みに紺は協力することになり、そばにいるうちに次第に・・という展開。

人であっても、鬼であっても惹かれる想いは止められない。
古くから宿敵とされる鬼と陰陽師の間柄であったとしても。
お互いが惹かれる様子が、優しく切なく綴られていきます。
本筋を支えるエピソードの数々もよく練られていて、紺が護る事に拘り結界術を極めてきた背景や、副首領・茨木童子として酒呑童子と肩を並べ戦った茨木が、男娼になってまでも求めてきたものなど、読み応えも満足でした。酒呑童子と茨木童子、紺と茨木、そのどちらの絆も邪魔しない描き方もとても好きでした。

紺の事を話す時の愛しさに満ちた優しい表情や、自分のせいで紺を危険な目に合わせてしまった時の苦しい表情など、鬼である茨木の紺に対する想いが溢れる表情がとても印象的。茨木の過去と相対し、愛しい人を欲する強い情を見せた紺にも、想いの深さを感じました。
ラストの1ページは何度見てもブワッとくるほどに大好き。

遊郭という事もあり、早いうちから身体を触り合うシーンは出てきますが身体の描き方も安定していて絡みも綺麗。茨木が紺を愛しく大切に思っている様子が伝わるエチも、描き下ろしの求める気持ちが止まないエチもとても良かったです。
明烏~の翠蓮も少し登場しますので、先に明烏を読まれた方が世界観もわかってより楽しめると思います。シリーズ続編も決定しているとこのこと、楽しみにしています!
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