いびつなボクらのカタチ【合本版】
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いびつなボクらのカタチ【合本版】

見多ほむろ

それぞれの物語

ネタバレ
2021年7月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ スーツのベストをきっちりと着こなしたピアノ講師の佑真さんが、バーで出会った行きずりの男と寝る流れが、もう、何とも言えず、最初から切ないです。人の脆さが、とてもリアルに感じられます。
7年一緒に暮らした恋人に置手紙一つで突然去られ、半年経っても引きずっている佑真さん(半年じゃ無理だよ、3年は引きずるよ…と思ってしまった)と母親が暮らす家(実家)で出会った伊吹くん、そして、伊吹の娘舞花ちゃんのお話。(8/9までセールです)
私が子どもの頃は、学校で血液型を聞かれたし、修学旅行前には保険証のコピーが必要だったし、自分と家族の関係をうっかり知ってしまうような機会が平然とその辺にありました。4人家族で自分以外はA型、自分だけAB型という事実、「続柄 養子」と書いてある保険証を先生に渡す気まずさなど、当時が思い出されます。いびつすぎると思えるくらいの登場人物の背景でしたが、そのいびつさを、最初に「普通で ありふれた物語」と言ってもらえたことは、ありがたかったなと思います。(とは言え、過去には自分こそ悲劇のヒロインみたいに思っていた時期もありますけれど)
紆余曲折を経て結ばれる佑真さんと伊吹くんですが、そこに至るまで、2人の姿をそばで見て、大好きな2人を想い、幼さの中の精一杯で背中を押してあげる舞花ちゃんが、たまらなく健気で、舞花ちゃんいてこその「幸せのかたち」だなあと思いました。
先にも書いたように、多少一般的ではない環境で育ったためか、結婚や血の繋がりというものにあまりこだわりたくない性分なので、15年バラバラに暮らしてきた2人の関係は割としっくりきます。でも、いくつになってもパートナーと一緒に暮らすという選択ができるお母さんや、若くして結婚する舞花ちゃんを「いいな」とも思いました。自分が、どんな感想をもつのか少し不安もありましたが、それぞれの幸せのカタチがうれしいなと思わせてくれるような、希望を持たせてくれるような、とても温かいお話だなと思います。
下巻ラストで2人が結ばれる場面、一コマ一コマの流れに、胸の高鳴りが増しました。佑真さんの静かな語りと頬を赤らめる伊吹くん、そして、伊吹くんの加減のできない激しさが良かったです。
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