このレビューはネタバレを含みます▼
吃音を抱え清掃員として働く瑠莉。清掃先のエリート社員高科。高科が落としたUSBを瑠莉が拾い、交流が始まります。作者さんのご友人が吃音持ちで、吃音の認知度が上がってほしいと思い描かれた作品だそうです。言葉が出てこない苦しみがこちらにも伝わり、どれ程苦しくてもどかしいだろうと胸が痛くなりました。瑠莉は言葉は容易に出てこないけれど、心の中はとても豊かで饒舌です。対する高科は仕事上では非がない程の人物ですが、他人とのコミュニケーションに重要性を感じておらず、言葉が死んでいるような状態。どちらもコミュニケーションに難を抱えているという点で共通しています。ところがこの2人で居るとき、高科は瑠莉に彼なりに手探りで気持ちを伝えようとするし、瑠莉は吃音が出ながらも積極的に話します。他の人の中では浮いてしまう2人が、二人の時はとても微笑ましく交流しているのがごく自然に感じました。何故かな…と考えて、2人共とにかく誠実でピュアなんだと思いました。真面目過ぎて、正直すぎるというか…。根底が似ているから一緒に居るとホッとして心が緩むのかな…と。そしてお互いの為に変わっていく2人。ひたむきに頑張る主人公が大切な人に出会えて、脱皮して力強く歩み出す姿は見ていて清々しい。ある種シンデレラ・ストーリーで幸せな気持ちで一杯になれたし、心洗われました!
(他の方のレビューで気になったp93の高科さんの沈黙は、タ行が苦手だと告白されて、自分の名前がタ行だからどうしたもんか…と悶々としているのではないかと思いました。)