神様なんか信じない僕らのエデン
」のレビュー

神様なんか信じない僕らのエデン

一ノ瀬ゆま

大河の源流をみるようなお話

ネタバレ
2021年8月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ キャラメイク、リアルさ(倉庫での逃避行の折に至近のシャワー室などある設定にせず、清拭用品等でやり過ごす下り等)も、作画も素晴らしかったです。■個人的には凛々斗くんのような髪が白・金・茶髪系で繊細なイケメン男子は攻めが好みなのですが、キャラ造形からして人類初のΩになるのは彼しかいないと完敗しました。人当たり良く、皆の真ん中にいる人気者な彼の笑顔は、繊細な心や、再婚するまで苦労していた母親を心配させない為のもの。外向きに見えて実は内向きな性質のために、初っ端の発情が起きた際に病院に掛かるのではなく寂れた倉庫に籠る方向へ行ったわけですね。■αやΩという概念のない世界で、普通に女の子を恋愛対象として考えて来た男の子が自分の意志では全くどうにもならない雌としての発情に翻弄されるのは空恐ろしいことだとも思いますが、「皆に嫌われたくない・母親を心配させたくない」という彼の性格とそれを察知し、かつ「目立たず穏便に生きていきたい」織人くんの行動により、二人の異変と初めての蜜月は秘されて行きます。■凛々斗くんとは反対に世界(外)の謎に惹きつけられる織人くんは異端視を避けるために内向的な擬態を身につけている。学問や知識への高いアクセスのために、異変の真相を独自に掴み、凛々斗くんを導き守っていくためにαの強い独占欲や支配欲に苦しみながら成長していく姿が素敵でした。■オメガバースの世界が異世界ではなく、読者の世界と地続きで、いつかある未来かもしれない、そこに至る細い小さな川が流れだす最初の話。どうか二人の未来が明るく楽しく、新たな人類を生み出していく道が幸せなものでありますようにと願わずにいられません。
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