ニューヨーク・ニューヨーク
」のレビュー

ニューヨーク・ニューヨーク

羅川真里茂

寝られなくなってしまった…3:50am

ネタバレ
2021年8月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォローしている方のレビューを拝見して、読んでみました。ジャンルの括りで読み手が限られていたら、もったいないなと思ってしまう作品です。
クローズドゲイの警察官ケインとウェイターのメルが出会い、恋人になるところから物語が始まりますが、2人の人生を軸にしたストーリーがあまりにも壮大で、壮絶で、とてもしんどいです。(本日8/16までセール)
正直、1巻と2巻で物語のカラーが全然違っていて戸惑いましたし、メルの境遇が辛すぎて、「どうしてメルばかり…」と苦しくて、途中でページをめくるのもためらいました。
幼いころから辛くて痛い思いをしてきたメルが、なぜこんなに穏やかでいられるのか、人を愛することができるのか、あまりにも自分とかけ離れていて分からないけれど、彼は誰のことも憎まなかったんだなと。ただ、独りぼっちが嫌で、お腹がとてもすいていて(泣けて仕方なかったです)、自分で必死に生きてきたんだなと、いっぱいいっぱいになった頭で考えています。その事実を知る前のケインの身勝手さや軽薄さは、本当に腹立たしいのですが、それでも、メルと出会って、少しずつ変わっていく彼の姿からも目が離せなくなります。
読後に、紹介してくれたフォローさん以外のレビューに目を通していて、別のフォローさん方を見付けました。そして、そこに書かれている温かさに作品の感動と相まって涙が出ます。
この作品は20年以上前の作品ですが、描かれている性的マイノリティに対する偏見や嫌悪は理解が進んだ今も残っているし、家族や友人へのカミングアウトに悩む人もいます。自分でも自分のことがつかみ切れていなかったりすると、伝えようがないしんどさもあります。自分が認識していたセクシュアリティに揺らぎが生じて、結局自分て何なんだろう?と悩んだことがありました。いろいろしんどくなって結局手放すことで楽になろうとしてしまった人間からすると、リアルさを否定できないからこそ、2人を遠くに感じてしまうのですが、2人が共に過ごした幸せな時を見つめながら、これから、どう生きていこうかな…どう生きていきたいのかな…と考えています。胸が苦しいですが、出会えて良かった作品です。
いいねしたユーザ18人
レビューをシェアしよう!