狐のよすが
」のレビュー

狐のよすが

ミナヅキアキラ

穏やかな時間の中で育まれていくもの

ネタバレ
2021年8月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「スモーキーネクター」が好きだった作家さん。新刊は森で生活する擬人化した動物たちの、心に響く優しい物語。
狐の九重は森で鳥の子を拾います。餌にしようと持ち帰るも餌付けしてしまい、幼く可愛いその鳥の子に慕われて・・と始まります。
まず、絵が本当に美しい。よすがの幼少期なんてとろけるくらいに可愛いです。
狐の九重も脇を固めるキャラ達もとっても魅力的!
作画の安定感に加えて色んなアングルからのカットも楽しめて物語を彩ります。
一番好きなのは瞳の描き方。意志が宿った気持ちが伝わる目力を感じるのが大好きです。

積み重ねていく日々の中で大切に育まれる想い。そして親としてよすがの命を繋いでいたはずがいつの日かその想いが形を変えていく様子がとても自然に描かれます。九重の事が掘り下げられると九重のよすがに対する思考が深く理解できて切ない・・。「よすが」という名も、誰にとって必要な「縁」なのかという事も。
よすがが九重から与えてもらった「食」の愛情表現で懸命に九重にぶつかる姿もとても可愛かった!成長しても変わらない、よすがのひたむきな真っ直ぐさに救われます。

種族は違えど、成せるものがなくとも、一人ではない。その絆がどんなに心強く幸せな事か。それこそが「よすが」。動物たちが息衝く森の中でゆっくりと流れていく日々を垣間見るかのような、優しく穏やかな物語。末永く幸せに満ちた日々を過ごせますように。
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