月影
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月影

SHOOWA

愛に泣き、愛に生きた一生

ネタバレ
2021年8月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォロー様、フォロアー様方、皆さま絶賛の作品に、読まずにはいられませんでした。皆さまの仰る『月影』『逃げ水』の順で読みました。確かに、間にある毛色の違う3作品とは別物で、何故この順番で収録されたのでしょう…
廓の前に捨てられていた赤ん坊の清人。14歳を過ぎた頃、客を取らされるようになり「何の為に生きてるんや」と言った言葉が、胸に突き刺さり胸を引き裂かれる思いがしました。たった14歳で死にたくなるような現実。少し話は違いますが、昨今多い10代の自-殺に彼等彼女等も、イジメや虐-待に絶望しかなかったのだ、とそんな風に考えてしまい胸が痛みました。
清人の生きる支えは、医師である『先生』だったのでしょう。身受け話に、二人にとっての最初で最後の愛する人との逢瀬に涙が溢れて来ます。月夜の中、声を殺して泣く清人。恋していたと心の中で告げる先生。こんなにも儚くて切ない、だけど美しい別れがあるでしょうか。胸が締め付けられます。
愛を乞いながら、愛を手放さなければならなかった清人の初恋でしたが、確かに愛されていた。身受けした養父も愛していた。愛にもいろんな形があるのですね…
そして、山口との出会い。愛を手に入れては、スルリと清人の手から離れていく、『逃げ水』ってこういう事なのか…
清人の人生、失うものは大きいけれど、決して不幸とも言いきれない気もします。そこに愛が確かにあったのだから。最後の臨終のワンシーン。幸せな人生を全うしたかのような、微笑みを感じる口元が印象的でした。やっと、愛した人達のそばに逝けるという事なのでしょうか?あぁ、ダメだ、喉の奥が締め付けられて痛い。涙しかありません。
こんな素晴らしい作品を紹介して頂いた皆さまに感謝いたします。ありがとうございました。
余韻に浸りたいので、今は他の収録作品については、ちょっと割愛させて頂きます。また、いつか書けたらいいなと思いますが、『月影』『逃げ水』の余韻だけでいいかもしれません。
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