溢れ出す音の世界に心掴まれます





2021年9月11日
重度の難聴のハンデを抱え、強い自力の思いで生きている五十鈴は、ある日バイオリンケースを抱え倒れている十嘉を助けます。音が聞こえず孤の世界に住む五十鈴と、天才と言われながら音の世界に馴染めずに孤の世界にいる十嘉。2人の出会いは、互いに知らなかった世界の扉を見つけたように、孤独で凍えかけていた互いの世界が、温まり、開きはじめていきます。物語の中に丁寧に描かれている、五十鈴の孤独。寂しさ、不安、辛さ。それをすべて1人で背負い、戦ってきたのだと想像すると胸が苦しくて仕方ありません。十嘉の演奏場面では、バイオリンの音色が描かれた絵の中から飛び出してくるような気持ちになりました。五十鈴と十嘉の言葉の一つ一つをもらすのが惜しくて、かなりじっくりと読み込んでしまいました。絵も物語も、凄く繊細で美しい、心に染み入る作品です。2巻が出るのは勿論待ち遠しいのですが、物語途中の1巻だけでも気持ちが満たされてしまう、そんな充足感があります。

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