コピーキャット
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コピーキャット

高井戸あけみ

ようやく、胸のつかえがおりた(かも)

ネタバレ
2021年9月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1つ挟んだ前の『トリップ』の続編+短編。
続編はある意味アンサーソング的お話。前作で相思相愛ながらもどこか不均衡に傾いていた主役2人の“好き” の天秤が、ジリジリと±0の目盛に近づき釣り合っていく様子に安堵する。
松浪のどっちつかずな態度の裏には、この愛しいものが自分のもとを去るかも知れない“いつか” を恐れる気持ちや、そうなった時に立ち直れなくならないよう気持ちを抑えようとする弱さが透け、やっと松浪という人を感じられた気がした。
かつて、思わせぶりな言葉や駆け引きめいた態度で感情を翻弄され最後には相手を憎み自己嫌悪もした他愛もなかった昔の自分には、相手の態度の裏にどんな気持ちがあるかが汲み取りきれなかったけれど、大きな年齢差や立場のあまりの隔たりに自分以上に戸惑いと恐れと不安があっただろう、と相手の年齢を超えた今、初めて実感レベルで当時の言葉や態度を理解できる感覚がある。若さで想像する気持ちと実際に年齢に達して感じる気持ちとでは、生々しさも強さも細部まで、こんなにも違うのだなぁ…!
モヤモヤした胸のつかえがやっと、おりた気がします。
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